最新記事

アジア

ダライ・ラマ制裁に苦しむ、モンゴルが切るインドカード

2017年1月14日(土)11時00分
楊海英(本誌コラムニスト)

 16年のモンゴル訪問中も、ロシア連邦のトゥワ、ブリャート各共和国から信者が現地に集結。ブリャートでは近年、ロシア正教から改宗するロシア人も出現。チベット仏教徒は数こそ3000万人前後だが地域的な広がりが大きく、民族問題が先鋭化している点も重なる。だから、北京は神経をとがらせているのだ。

 ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマは哲学思想をユーモラスに分かりやすく語るので、実は漢民族にも人気が高い。従来は在外の漢民族や香港、台湾にファンが多かったが、近年では中国国内でもその説教に耳を傾ける人たちが増えてきた。

 急速な経済成長で精神的な世界を失い、実質的に国家資本主義制度の搾取にあえいでいる漢民族の貧困層まで、チベット仏教に救済を求めている。こうした国内外のブームは共産党の一党独裁を根幹から揺るがしかねないため、中国はダライ・ラマの外国訪問を糾弾してきた。

【参考記事】埼玉の小さな町にダライ・ラマがやってきた理由

 ダライ・ラマがモンゴルを最初に訪問したのは79年。既に社会主義制度は疲弊していた。それでも90年の社会主義体制崩壊はダライ・ラマ訪問と無縁ではない、と中国は理解している。

 資源価格暴落による未曽有の経済的困窮に陥ったこの時期の中国の制裁は、モンゴルに衝撃を与えている。「竜」と相性が合わないまま、ついに「ゾウ」の出番を待つ時となったようだ。

 果たしてモディはどのように登場するのだろうか。

[2016年12月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB利下げ、年内3回の公算大 堅調な成長で=ギリ

ワールド

米・サウジ、安全保障協定で近く合意か イスラエル関

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、

ワールド

米大学の反戦デモ、強制排除続く UCLAで200人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中