最新記事

インタビュー

個人の身の丈に合った「ナリワイ」で仕事と生活を充実させる

[伊藤洋志]「ナリワイ」代表

2016年4月21日(木)06時12分
WORKSIGHT

自分の時間と健康を犠牲にしない生き方

 個人が少ない元手と多少の訓練で始められて、やればやるほど健康になり、技が身につき、仲間が増える仕事――これを僕は「ナリワイ(生業)」と呼んで、あれこれ企画・実践しています。

自力で仕事を作り出すことはそれほど大変じゃない

「生業」は読んで字のごとく、生活でもあり仕事でもあるものです。小規模な自営業の種を生活の中から見つけて、それを仕事として成り立たせていく。起業のように肩ひじ張ったものでなく、多額の資金や高度な専門技能がなくてもできるわけです。「仕事を探す」=「勤め先を探す」と考える人は多いですけど、自力で仕事を作り出すのは実はそれほど大変じゃないんです。

 会社勤めをしていたり、特定分野に特化した自営業では、生計を立てるための手段がそれ1つしかないので無理もしがちです。それが悪いとは言わないけれども、気づけば自分の時間と健康をお金と交換することになっていたりする。それは人生を盗まれるようなものではないでしょうか。

 ナリワイではいくつかの小さな仕事を組み合わせて生活を組み立てるので、自分の時間と健康をお金と交換することなく、仕事と生活をバランスよく充実させることができます。飛び込み営業でお客さんを獲得するというより、生活の中で出会った人たちの役に立つことを見つけて、そこからスタートするナリワイも多いので、結果として人間関係が広がっていくものでもあるのです。

【参考記事】「ホームレス」を生み出さない社会を目指して

重視するのは目先の収入よりもツアーのコンセプト

 今、僕が手がけているナリワイは、通年で行うものと年間を通して特定の時期に行うものの2種類に分けられます。

 年間のある時期に行うものでは、モンゴルやタイの「武者修行ツアー」があります。現地の文化や雰囲気をのんびり体験したいという人のためのツアーで、モンゴルでは草原で乗馬をしたりゲルを建てたりして、遊牧民の暮らしや技を実地体験。タイでは現地の村人と一緒に竹で高床式住居を建てたり、伝統的な料理・衣装を楽しんだりします。

 もともと僕がボランティアでモンゴルを訪れていたことから、現地の方々と協力して、遺跡や寺院を巡って帰るだけじゃない、モンゴルの生活文化に触れられるツアーをしようじゃないかと始まったものです。2007年に始まって以来、年2回ほどのペースで行い、現在は19期目を数えています。タイのツアーは2014年から始まって、モンゴルで培ったノウハウを元に、別の人がメイン企画者として担当してくれています。

 参加者の反応はむちゃくちゃいいですよ。「ここまで徹底していろいろ体験できる企画はない」「とにかく楽しかった。もう1回来たい」といった意見が多くて、リピーターも増えてきました。参加者同士の交流も醍醐味の1つで、職業も住む場所もバラバラだけど興味や関心を同じくする人たちが集まるので、すぐ仲良くなっちゃうんです。帰国後も交流があるみたいで、ツアーが出会いのきっかけを提供しているといえます。

 そういうフラットな場所をどうやって作るかというのもナリワイの隠れたテーマです。多様な人が交流して、しかも和気あいあいと楽しむことができればツアーのバリエーションも広がるし、僕自身も飽きずに続けられますしね。

wsNariwai-1.jpg

モンゴル武者修行ツアーでは草原を馬で移動する。(写真提供:伊藤洋志氏/5点とも)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中