最新記事

中東

携帯使用で手を切り落とすISISの恐怖支配

エジプト人21人の処刑で残虐性を見せつけたISISの支配下で暮らす住民の悲劇

2015年2月17日(火)15時40分
クリスティーナ・シルバ

新たな標的 家族を殺されて嘆くコプト教徒のエジプト人 Asmaa Waguih-Reuters

 リビアで拘束していたエジプト人のキリスト教徒の一派、コプト教徒21人を海岸に並べて殺害する映像で、またも世界を恐怖に陥れたテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)。そのターゲットは拡大する一方だが、残酷な刑罰の対象にされているのは外国人だけではない。

 ISISの支配下にあるイラクのモスルでも、日常的に残虐行為が行われている。最近では、禁止されている携帯電話を使用したとして女性住民3人の手を切り落とし、男性5人を鞭打ちの刑に処したという。ISISは携帯電話を使用した者には、公開鞭打ちかそれ以上の刑を科すと警告している。

 報道によれば、彼らが警戒しているのは住民が携帯電話を使うことで機密情報が流出し、米軍の空爆に利用されることだ。米軍主導の有志連合は昨年8月からシリアとイラクのISIS支配地域に空爆を仕掛けており、モスルには少なくとも20回の空爆を実施している。

 さらにISIS戦闘員は、負傷した戦闘員の輸血のため、シリアの一般市民に献血を強いているようだ。人質になっているヤジディ教徒の女性たちも強制的に献血させられたという。「献血の強制は違法だし非人道的だ。特にISISは血液型も考慮せずやみくもに血を奪っており、悪質だ」と、イギリスのアラビア語紙アル・クドス・アル・アラビーの記者ジワン・ソズはシリアの独立系メディアARAニュースに話した。「彼らは採血に必要な医療器具も使わず、野蛮な方法で血を取っている」

 ISISは以前から飲酒や呪い、喫煙などを「ハラーム(宗教上の禁忌)」として禁止してきた。先月には、シリア東部で「見せしめ」として晒された遺体が発見された。ISIS幹部の切断された頭部の口にはタバコが入れられており、アラビア語で「これは許されない」と掲示されていた、とロサンゼルス・タイムズは報じた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中