最新記事

米大統領

オバマの暗殺リスクは意外と低い?

反米テロリストや人種差別主義者からの脅迫が殺到したのは過去の話。最近のオバマ大統領は歴代大統領より安全かもしれない

2009年11月10日(火)17時17分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

蘇る悪夢 11月5日、フォートフッド基地で起きた銃乱射事件は政府要人や軍に対するテロの恐怖をあらためて思い起こさせた Reuters

 11月5日に米テキサス州のフォートフッド陸軍基地で起きた銃乱射事件の容疑者は、イスラム教徒の軍医だった。この事件を機に、政府関係者や軍事施設に対するテロへの懸念が再び高まっている。

 もっとも、バラク・オバマ米大統領の警護を担当するシークレットサービスに言わせれば、大統領への脅迫はこの数カ月、著しく減少しているという。

 今年8月にシークレットサービスに関する著書を出版したロナルド・ケスラーによれば、ジョージ・W・ブッシュ前大統領が在任中に受けた脅迫は年間3000件。オバマの大統領就任以降、その数は400%増加しているという。

 ケスラーの報告を分析した英デイリー・テレグラフ紙によれば、オバマは毎日30件の暗殺予告を受けている計算になる。3月にはシークレットサービスの責任者マーク・サリバンが下院歳出小委員会で、警護対象者への脅迫は「引き続き高い水準で続いている」と証言した。

 だが、シークレットサービスの広報担当者エド・ドノバンの主張は違う。彼はニューズウィークに対し、オバマの暗殺リスクが際立って高いという見方は古いデータに基づいていると語った。

 ドノバンによれば、シークレットサービスが把握しているオバマへの脅迫件数は、昨年11月の大統領選前後と今年1月の大統領就任前後に「急増」したが、その後は相当減少している。就任後の平均件数はブッシュやビル・クリントンの在任中と同じ水準で、最近に限ればブッシュとクリントンより少ないほどだという。

大物テロリストが沈黙する理由

 シークレットサービスがこれほど詳細に、大統領の暗殺リスクを論じたことは過去になかった。だが、誤解が広まっている現状を懸念して情報を公開することにしたと、ドノバンは言う。

 これに対し、ケセラーはニューズウィークの取材に対して「脅迫件数は増えたり減ったりするが、平均400%増は正しい数値だ」とメールで反論。「大統領への脅迫が増えているにも関わらず、シークレットサービスは自身の力不足を隠し、メディアに嘘をついている」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中