最新記事

エンタメ

『SATC』も『ソプラノズ』も...超人気ドラマの「続編」はなぜイマイチなのか

The HBO Reboot Problem

2022年1月20日(木)18時07分
フィリップ・マチアク
『And Just Like That...』プレミア

昨年12月8日に開かれた『And Just Like That...』プレミア Caitlin Ochs-REUTERS

<最近『SATC』や『ザ・ソプラノズ』などリブート版が続いているが、冴えないのはオリジナルの本質を尊重しないから>

ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の再放送がTBS/ターナー・ブロードキャスティングで始まったのは2003年。過激な場面に手を加えたTBSの修正版は、1998年に登場したHBOのオリジナルとは似て非なるものだった。

汚い言葉やセックスシーンをカットすれば、サマンサの出番はないに等しい。口の悪いお色気担当のサマンサを好きな視聴者ばかりではないだろう。だが彼女を亡霊のように扱う修正版は、根本的に何かが違った。

HBO Maxで昨年12月に配信が始まった続編『And Just Like That.../セックス・アンド・ザ・シティ新章』を見て思い出したのが、この修正版だ。

キャリー、ミランダ、シャーロットと共にヒロイン4人組の一翼を担ったサマンサが消えただけではない。1話30分だったエピソードが『新章』では無意味に45分に拡大され、キャリーのナレーションはほとんどなくなった。

オリジナルの持ち味をあえて払拭したような仕上がりで、これではもはや『SATC』とは思えない。

人気ドラマのリブートを成功させることは、果たして可能なのだろうか。

HBOが90年代末に制作した名作の復活を試み、図らずもゾンビに変えてしまったのは、この1年でこれが2度目だ。昨年秋には親会社のワーナー・ブラザースが、『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の前日譚となる映画を公開した。だが、これにも決定的な何かが欠けていた。

コンセプトには期待が持てた。クリエーターのデービッド・チェースは60年代にニュージャージー州ニューアークで起きた人種暴動を映画で掘り下げたいと、抱負を語っていたのだ。

元の登場人物やネタに依存しすぎ

だが、ふたを開けてみれば映画『ソプラノズ ニューアークに舞い降りたマフィアたち』は、ドラマの世界をそっくり再利用していた。

故ジェームズ・ガンドルフィーニが扮して強烈な印象を残した主人公トニーの青春時代を、息子のマイケル・ガンドルフィーニが演じた。おなじみのマフィアの面々も、若返った姿で脇を固めた。

『マフィアたち』はオリジナルに近づきすぎて、むしろその魔法から遠く離れてしまった感がある。製作・共同脚本のチェースにもアラン・テイラー監督にも、物語の軸である人種暴動に踏み込もうとする気概は見えない。元の登場人物やネタに依存しすぎたのもいただけない。

『SATC』も『ザ・ソプラノズ』も、リブート版はオリジナルの本質を引き継ぐより、そこから利益を吸い上げることに関心があるようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準

ワールド

アングル:コロナの次は熱波、比で再びオンライン授業

ワールド

アングル:五輪前に取り締まり強化、人であふれかえる

ビジネス

訂正-米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中