最新記事

韓国映画

「心をえぐられた」「人生で一番泣いた」...ハリー杉山のオススメ韓国映画5本

2021年5月4日(火)08時57分
ハリー杉山
ハリー杉山

<韓国にゆかりのある4人がおすすめする韓国映画。圧巻のストーリーテリングに心をえぐられた映画から、笑って泣ける傑作まで、本気で心を動かされた5作品とは?>

1.『オールド・ボーイ』(2003年)
2.『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年)
3.『KCIA 南山(ナムサン)の部長たち』(2020年)
4.『神と共に』(2017年)
5.『私の頭の中の消しゴム』(2004年)

高校はイギリスの全寮制私立男子校(パブリックスクール)だったので、週末の暇なときにはサッカーをするか、友達と寮の部屋で映画を見ていました。ハリウッド大作だけでなく東欧の映画なんかも見ていたので、マイナーな作品も結構知っています。

そんな僕が、韓国の映画はすごい! と初めて思ったのがパク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』(2003年)。『ユージュアル・サスペクツ』みたいな衝撃のオチや、『セブン』みたいにこんなに残酷な終わり方でいいのかとか、驚かされる映画は多々あります。でもそれをはるかに超えて、心をえぐられるような作品は『オールド・ボーイ』が初めてでした。

210504P52_HRY_05old.jpg

PHOTOFEST/AFLO

物語は、15年間監禁されていた男が突然解放されるところから始まります。ビジュアルのすごさに衝撃を受けましたが、やはり圧巻はストーリーテリング。音楽の使い方や、役者一人一人の力もすごい。主役のチェ・ミンシクの演技には感動しましたし、見たこともないほど恐ろしい悪役を演じたユ・ジテが好きでした。

未来のために闘う勇士

僕の父ヘンリー・スコット・ストークスはニューヨーク・タイムズ紙の東京支局長として、韓国と長い付き合いがありました。1993年の金泳三大統領の就任日には韓国まで僕を連れて行き、会わせてくれました。『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17年)で描かれた80年の光州事件の現場に父は居合わせ、後に僕もいろいろと話を聞かされました。映画の主人公の1人、ドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターもよく知っています。

210504P52_HRY_01taxi.jpg

EVERETT COLLECTION/AFLO

そんな背景もあって、『タクシー運転手』は僕にとって特別な映画。たとえ光州事件を知らなくても、民主化運動や、政府に対して立ち上がることの意味を教えてくれる素晴らしい作品です。

人種の壁を越えた友情は本当にあるのか、ということも考えさせられます。そして、「デモ」についても。多くの日本人は、デモというとちょっと「引く」かもしれません。しかし日本の外に出れば、それは自分の思いを表現するごく普通の手段です。ご飯を食べたり寝たり、人を愛したりするのと同じ生活の一部で、デモ=反政府、デモ=暴力と考えるのはナンセンスです。

今の日本には「意思を表明しても何も変わらない」という諦めがあると思います。だからこの映画で、国の未来のために闘う勇士たちを見ると、ぐっときてしまいます。

なぜ韓国映画にこんなに心を溶かされるのかと考えてみると、それは情の伝え方が非常にうまいから。「喜怒哀楽のローラーコースター」みたいなところがあって、人間の心情を生々しく表現するので、たとえ韓国語が分からなくてもしっかりと伝わってきます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中