最新記事

ビジネス

26歳社長は「溶接ギャル」 逃げた転職先で出会った最高の「天職」

2021年9月11日(土)16時08分
村田 らむ(ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター) *東洋経済オンラインからの転載
溶接ギャルを名乗る『勝倉ボデー』の女社長粉すけさん

ギャルが板金業? 粉すけさん(26歳)は溶接ギャルを名乗る『勝倉ボデー』の女社長なのです(筆者撮影)

これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい

溶接ギャルのルーツ

粉すけさん(26歳)は溶接ギャルを名乗る、板金業を手掛ける『勝倉ボデー』の女社長だ。

勝倉ボデーは正式には板金塗装業であり、自動車やバイクの壊れた部分を修理したり、カスタムしたりするのが主な仕事だ。

福井市にある勝倉ボデーのガレージには、修理やカスタム作業の途中の自動車やバイクが並んでいて、その周りにはガスバーナーをはじめとするさまざまな道具や塗料が並んでいた。そんな職場の中でキビキビと働く粉すけさんは格好よかった。

溶接ギャルという珍しい肩書や、歯に衣着せぬ発言でSNSでは人気が上がり、テレビにもたびたび出演している。最近では、有名企業とのコラボレーションもしているという。

粉すけさんは、どのような道のりを経て板金塗装企業の社長になったのか? これからどこを目指して行くのか? 勝倉ボデーの社内で聞いた。

「私は生まれも育ちも福井県福井市なんですが、家庭環境はちょっとぐちゃってるんですよ」

粉すけさんの実家は創業100周年を迎える大きな会社を経営している由緒正しい家だった。粉すけさんの実母は2人姉妹の子どもを産んだが、妹の粉すけさんは子供のできなかった実母の姉夫婦に養子に出されたという。以後粉すけさんは、養父母のもとで1人っ子のように育った。

「実母はちょっといい加減なタイプの人なんですけど、育ての親はすごいまじめな夫婦なんですよね。私とは性格が合わなかったです。口を開けば喧嘩ばかりしてました」

小学生時代の粉すけさんは、性格は明るく、友達も多かった。

「ただし勉強は全然できなかったですね。なんとか頑張って宿題をしても、その宿題のノートを家に忘れていっちゃう。『忘れてきました』って言い訳すると、先生には、

『うそをつけ、往生際が悪いぞ!!』

って怒られました」

粉すけさんは、一度本気で勉強をやってみようと思い立ったことがあるという。改めて1ページ目から全力で勉強をしてみた。

「それでも何一つ理解できなかったんですよ。これはもう駄目だな~と思って、一気にやる気がなくなりました」

中学校に行くと、特に何か問題を起こしたわけではないのだが、毎日のように先生に怒られた。

「親がさすがにおかしいと思って、私を病院に連れて行きました。そうしたらADHD(注意欠如・多動症)だって判明しました。

感情のコントロールができなかったり、落ち着きがなかったりするのは、病気のせいなんだってわかりました。

両親からは、

『今まで怒りすぎて悪かった』

って謝られました」

ただ、粉すけさんはすでに学校に行くのがほとほと嫌になっていた。

学校に行かなくなると、似たような境遇の先輩たちに声をかけられた。

「そういう先輩たちとゲームセンターやドン・キホーテに入り浸ってました。当時は福井市にドン・キホーテなかったんで、わざわざ金沢まで行ってました」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買

ビジネス

中国外貨準備、4月は予想以上に減少 金保有は増加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中