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対談

保育園を変えれば、「AI×人口減少」の未来を乗り越えられる!?

2018年5月17日(木)18時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『ポスト新産業革命』の著者で経済評論家の加谷珪一氏(左)と、『AI vs.教科書が読めない子どもたち』の著者で数学者の新井紀子氏 Newsweek Japan

<AIと共存する社会での活躍が求められる子供たちに、文章が理解できないという問題が起きている。「リーディングスキルテスト(RST)」を実施・検証した数学者の新井紀子氏と、経済学から社会を読む経済評論家・加谷珪一氏の対談・後編>

団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上になるという「2025年問題」。

少子高齢化が本格化し、深刻な労働人口減少に直面する一方、AI(人工知能)の導入による仕事の効率化が進んでいく近未来の日本で、今の中高年世代に求められるようになるスキルについては前回議論したとおりだ。

では、これから社会に出ていく若者たちには、どんな能力が求められるのだろう。

移民の受け入れに積極的でない日本社会が労働力を確保するには、AIと共存しながら少ないマンパワーで生産性を上げていく必要があるだろう。ところが、今の若年層はAIと共存するために必要な「文章読解力」さえないという。

自ら開発した「リーディングスキルテスト(RST)」で教育を科学的に解析してきた数学者の新井紀子氏は、著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の中で、中高生の読解力があまりに低い実態を明らかにし、危機感を募らせている。

「AIと共存する社会で、多くの人々がAIにはできない仕事に従事できるような能力を身につけるための教育の喫緊の最重要課題は、中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることです」とまで新井氏が明言するのは、現状の生活水準を維持するには「最低限、作業マニュアルや安全マニュアルを読んで、その内容を理解する必要がある」からだ。

経済評論家の加谷珪一氏も、著書『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)の中で、よく言われるようにAIの導入が進むことで職業の半分が失われるようなことはないとしながらも、「現実には特定の人に業務が集中し、同じ業務に従事する社員の数が半分になると考えた方がよい。要するにデキる人に仕事が集中するということなので、ある意味では職業の半分が消滅するより残酷かもしれない」と、厳しい見解を示している。

ではこのまま、何も施策を取らずに今の中高生が日本経済の主戦力となる2030年代を迎えてもいいのだろうか? 読解力がない中高生の能力を今から伸ばすことはできるのだろうか? 2人に話を聞いた。

◇ ◇ ◇

テストの問題文を理解できない中高生たち

加谷 先生が開発された「リーディングスキルテスト(RST)」は、文章をどれくらい理解できているかを測るテストですが、全国で行われた大規模な調査の結果、中高生の多くがテストの問題文を理解できていないという実態が判明しました。それが『AI vs.教科書が読めない子どもたち』のテーマにもなっていますね。

私もRSTの結果には非常に驚きました。数学のテストが悪い場合、数学の内容や公式を理解していないと思いますよね。あるいは、数学への関心が低いとか。しかし、そうではなく、そもそも数学の問題文を正確に読みこなせないんです。それでは解けるわけがないし、興味もわかないでしょうね。

この現実を目の前にしたときに、多くの子供たちが文章の意味を理解できていないのならば、問題文のほうを簡単にしたらいいのではないか、という意見もあるかと思います。それについてはどうお考えですか?

【対談・前編】50代の「オジサン」がAI時代を生き抜くにはどうすべきか?

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