最新記事

金融

節目突破したドル高/円安 原油相場や中国経済次第で反転の可能性も

2021年10月14日(木)12時36分
ドルと日本円の紙幣

ドル/円の上昇に弾みがついている。写真はドルと円の紙幣。2013年2月撮影(2021年 ロイター/Shohei Miyano)

ドル/円の上昇に弾みがついている。ここ2年の天井だった112円を抜け2018年11月以来の114円台をうかがう展開だ。インフレ懸念が強まる中、米金利が上昇しているのが大きな要因だが、原油高が止まらずリスクオフが起きた場合や中国経済の減速が大きくなれば、一転して円買いが強まるとの見方もある。

原油高とシンクロ

いまのマーケットの「メインテーマ」はインフレだ。そのインフレ懸念を強めているのが商品価格、特に原油価格の上昇となっている。新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴う需要増加に加え、中国など主要国での電力・ガス不足といった要因が背景となり、上昇が止まらない。

SMBC日興証券のチーフ外債・為替ストラテジスト、野地慎氏は、今のドル高は原油高とシンクロしていると指摘する。ドル/円に限らず、石油製品の自給率が低いユーロなども弱く、「資源を持たない国」の通貨が売られる展開となっているという。

「脱カーボンの潮流の中、石油輸出国機構(OPEC)やシェール業界が生産能力拡大に及び腰であり、容易に原油の供給が増えそうになく、むしろ原油高局面の長期化を介して各国経済のダメージを深くする可能性がある」と野地氏はみる。

原油高は今のところ円安要因だ。日本はエネルギー輸入国のため、原油高は交易条件の悪化を通じて円売り材料になる。しかし、バークレイズ証券のチーフ為替ストラテジスト・門田真一郎氏は中長期的にみて、「今後、原油高が行き過ぎてリスク回避姿勢が強まった場合、安全通貨としての円買いが進む可能性もある」と指摘する。

米金利上昇が「仲介」

原油高(インフレ)とドル高の間を「仲介」しているのは米金利上昇だ。米10年債利回りは今年6月以来の1.6%を付けた後、足元は1.5%台に調整しているが、5年債利回りは依然として2020年3月以来の1.0%台で推移している。

インフレは全般的にみれば金利上昇要因だが、12日の米債市場では景気悪化を意識 して長期金利が低下する一方、金融引き締めを意識して短期金利が上昇、金利曲線がツイスト・フラット化した。最近のドル/円は短中期金利との連動性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中