最新記事

日本企業

このアイスが64円! 10期連続売上増シャトレーゼが「おいしくて安い」理由

2021年10月18日(月)10時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
シャトレーゼのアイス「チョコバッキー」

シャトレーゼで人気ナンバーワンのアイス「チョコバッキー」。発売3年で累計1億本を突破した看板商品で、1本なんと税込64円(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』117ページより)

<広告宣伝には一切お金をかけていないのに、全国的な人気を誇る山梨県のお菓子メーカー、シャトレーゼ。その快進撃には秘密と「こだわり」があった>

ツイッターで今、話題になっているのが「#シャトレーゼ1000円チャレンジ」だ。

1000円の予算でシャトレーゼのお菓子をチョイスして購入、それをツイッターで公開するというもの。それがシャトレーゼである理由は、単価が安いからだ。1000円でも、驚くほど多くのお菓子が買える。

しかも、添加物を極力抑えて作られている上に、おいしいという評判である。なぜ、そんなお菓子が作れるのか?

シャトレーゼは、山梨県甲府市に本拠を置くお菓子メーカー。広告宣伝にはお金をかけておらず、テレビCMや新聞広告を打ったことはないが、全国的にも人気がある。

冒頭写真の「チョコバッキー」のほか、「無添加 契約農場たまごのプリン」「ダブルシュークリーム」「スペシャル苺ショート」など、食べたことがある人も多いのではないだろうか。

広告宣伝費がほとんどないのは、それによりお菓子の価格が上がり、消費者に負担をかけたくないから。それにもかかわらず、シャトレーゼは10期連続で売り上げが増加している。

このシャトレーゼホールディングス代表取締役会長の齊藤寛氏は、その秘密を初の著書『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』(CCCメディアハウス)でこう明かす。


「お客様はいま、何を望んでいるのか」を考えながら、一つひとつ実現させ、積み上げてきた結果です。特別な魔法を使ったわけではないのです。
――『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』2~3ページ

とはいえ、魔法はなくとも、何かがあるはず――。齊藤氏に加え、同社幹部が「勝ち続ける独自戦略」を詳細に記した本書から、経営の根幹にあるものを見てみよう。

経営の根幹「三喜経営」とは何か

1954年、シャトレーゼはたった4坪の焼き菓子店「甘太郎」から始まった。齊藤氏が20歳の時である。当時から、「お客様の目線で考える」「他人ができないと思うことにあえて挑戦する」姿勢を心がけてきたという。

chateraisebook20211015-2.jpg

三喜経営に徹しよう/一、お客様に喜ばれる経営/一、お取引先様に喜ばれる経営/一、社員に喜ばれる経営(『シャトレーゼは、なぜ「おいしくて安い」のか』31ページより)

1967年、齊藤氏は社名をシャトレーゼに変更するとともに、この社是を定め、経営の根幹に据えた。この3つの喜びがあってこそ経営が成り立つと考えたのだ。

まず大切なのは、「お客様の目線」で考えること。おいしいのはもちろん、安心・安全であることが欠かせない。

取引先である生産者や小売店が儲かることも必要だ。シャトレーゼは、FC(フランチャイズ・チェーン)にもかかわらず、加盟店からロイヤリティを取らない。FCオーナーはのれん分けしたパートナーだと考えているのだ。

また、業績目標が達成した年は、社員に利益の1割を決算賞与として配分している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中