ジョブズ型経営を捨てろ
大躍進の秘訣は反抗心
ゲイツは00年に友人のスティーブ・バルマーにCEOの座を譲った。その前年、マイクロソフトの株式時価総額は世界中の企業の中で史上最高を記録していた。
それほど成功している会社をつくり直す必要はない。バルマーは手堅く伝統を守った。そして、この場合も情報技術は進化し、マイクロソフトはリーダーになり損ねた。株価は00年に下落。以後は低迷を続け、今年就任した3代目のCEOの下でわずかに上がった程度だった。
この2社と明暗を分けたのがIBMだ。ワトソンSr.はコンピューター業界の生みの親だったと言っていい。50年代には競合他社がすべて結集しても、IBMにはとても太刀打ちできなかった。その後を継いだ息子は父親をはるかにしのぐ経営手腕を発揮した。
ワトソンJr.がCEOを務めた56〜71年にIBMの従業員は4倍に増え、売上高は9倍以上増加。2代目最後の年にはIBM株は驚異的な高値を付け、時価総額はダウ平均の構成銘柄30社のうちの21社の時価総額の合計に匹敵するほどだった。
IBMの継承はマイクロソフト、インテルとどこが違ったのか。息子は父親に反抗するのが世の常だ。ワトソンJr.は父親のやり方を踏襲せず、自分流の経営を貫いた。
バレットとバルマーの場合と同様、ワトソンJr.が会社を継いだ当時は、業界全体が変革期を迎えていた。電磁開閉器を使った動作の遅いマシンから、真空管、さらにはトランジスタを使ったコンピューターが登場。ワトソンJr.はこうした技術革新の波に乗って、父親が築いた伝統とたもとを分かち、新時代のリーダーを目指した。
では、アップルの代替わりはこの2つのタイプのどちらに近いだろう。クックは新製品のプレゼンテーションの仕方までジョブズをそっくりまねている。ジョブズを敬愛してやまないからだ。もちろん、それは結構なことだ。しかし、どんなに頑張ってもクックはクックでしかなく、ジョブズにはなれない。