米住宅市場「回復」の落とし穴
住宅危機の直撃を受けた地域はどこも、カリフォルニアと同じ状況にある。アリゾナ州では差し押さえ件数は減少しているが、返済が90日以上遅れているローンの割合は9カ月間で60%増えた。
ローン延滞が増え、差し押さえが減るという奇妙な動向は、住宅価格の「安定」を生み出す要因になっているようだ。私は1年前、困窮した住宅保有者への救済措置を行えば、貸し手を救済することにもなると論じた。額面価格では到底売れない差し押さえ物件を、金融機関が多数かかえる事態を避けられるからだ。
金融機関は不動産市場が回復し、住宅価格が上昇する日を待ち望んでおり、その兆しはあるようにみえる。全米不動産業者協会は、市場に出回る物件数が減ったために住宅価格が上昇していると嬉しそうに報告している。
だが、その背後にはローンが払えず、自宅が差し押さえられる日を待つ人が増えているという恐ろしい現実がある。そして金融機関は、どうせ売れない物件を急いで差し押さえようとはしない。つまり、住宅市場に差し押さえ物件が流れ込んで供給過多になるのを避けたい金融機関の思惑によって、市場が安定しているようにみえるだけなのだ。
非現実的な期待にすがる金融機関
そういう視点で見ると、今回の差し抑え救済計画はやはりうまくいくはずがない。借り手が支払える水準にまで住宅ローンを削減するとなると、元本を40〜50%も引き下げることになる。住宅市場の落ち込み振りを露呈し、回復とは程遠い現実を認めることになる計画に、金融機関が乗るとは思えない。彼らは住宅市場の低迷にじっと耐え、いつかまた不動産価格が跳ね上がる日を待っているのだから。
住宅価格が急騰を続けていた頃、金融機関はその傾向が永遠に続くと思っていた。彼らは今、同じように非現実的な論理で、住宅価格がいつか安定するだろうと期待している。
かつての住宅バブルでは、金融機関が私たちをだました。では、今回は?
「1度だまされたら、だました者の恥。2度だまされたら、だまされた者の恥」という格言がある。金融機関と不動産業者は、住宅市場の回復が近づいていると言うかもしれないが、今回もまたその言葉を信じるなら、悪いのは信じる方だ。
*The Big Money特約
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