最新記事

投資

日本株が魅力的な理由

「日本は負け犬」、という世界の投資家の常識は間違っている

2009年8月26日(水)15時04分
バートン・ビッグズ(ヘッジファンド「トラクシス・パートナーズ」マネジングパートナー)

 アジアが世界経済の回復をリードし株式市場が活況を呈するなか、アジア経済の巨人である日本が勢いを失っているのは興味深い現象だ。日本株は4つの「U」──
低い保有率(underowned)、過小評価(undervalued)、敬遠(unloved)、魅力がない(ugly)──に苦しめられている。

 日本は負け犬、というのが世界の投資家に共通した見解だ。政治は年老いた政治家や特権階級による茶番劇だし、高齢化が進み、人口は減っている。「失われた20年」を経験した経済は停滞とデフレから脱却できずにいる。

 20年前には4万円近かった日経平均株価は今では1万円未満だし、09年3月には26年5カ月ぶりの安値水準に落ち込んだ。長期的な弱気市場とはまさにこのことだ。

 だが、多くの点から見て日本株は安過ぎると筆者は考えている。

日本が陥った「バリュートラップ」

 日本の株式市場の主役は、安価な消費財の輸出企業ではなく、高度な技術力を製品に生かしている輸出企業だ(こうした企業の株で得られる収益は国外の同様の企業に比べて平均3倍に上る)。

 日本の輸出の約半分はアジア向けで、2割は中国向けというメリットもある。アジアは中国に引っ張られる形で世界最速ペースで成長を遂げており、日本がその恩恵を受けるのは確実だ。

 実際、日本経済は既に上向き始めている。08年第4四半期から09年第1四半期にかけては内外需共に低迷し、実質GDP(国内総生産)成長率は年率換算で約14%の落ち込みとなった。だが今では経済は安定し、4月以降、輸出は力強い回復を遂げた。特に中国などアジア諸国向けの輸出が好調だ。

 エコノミストの間では、09年後半の日本の実質GDP成長率は約3%になるというのが共通見解。野村証券は、日本企業の利益は10年に62%跳ね上がるとみている。

 日本株は、割安感はあるものの、いつまでたっても割安のままの「バリュートラップ」と呼ばれる状態にある。投資家はもう長いこと、日本株から大きな利益を得ていない。

 日本株は大口投資家の間で保有率が低く、敬遠されている。その一方で、日本の一般投資家たちが久しぶりに株取引に積極姿勢を示し始めたというのは興味深い。08会計年度に国内5大証券取引所で取引を行った一般投資家の数は200万人以上も増え、4200万人という新記録を達成した。

 日本は今でも極めて豊かな国だ。世界最大の債権国(対外純資産はGDPの約44%)であり、純所得に対する家計純資産の割合がどの主要国より高い。日本の一般家庭の主婦がもっと投資に積極的になれば、株価は大きく押し上げられるだろう。

政権交代で株の奪い合いが始まる?

 日本市場全体で見ると、株価純資産倍率は1・3倍(アメリカは2倍、日本はかつて5倍だった)で、株価売上倍率は0・5倍だ。株価の判断基準としてはこの2つが安定しており、最も優れていると筆者は考えている。

 配当利回りは約2%。コーポレート・ガバナンス(企業統治)も改善されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、20万8000件と横ばい 4月

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中