コラム

安倍晋三、トランプ、文在寅......新型コロナ対応で評価を上げた人、下げた人

2020年04月07日(火)13時00分

大統領候補に推す声まで上がるニューヨーク州のクオモ知事 MIKE SEGARーREUTERS

<パンデミックで問われた政治的手腕で期待に応えた指導者は誰か、首脳の対応力を採点してみると......>

政治の世界には、リーダーは「よい危機」を逃してはならないという表現がある。

目的のためなら手段を選ばないマキャベリ的な言い回しだが、歴史はその正しさを裏付けている。古来、偉大な指導者が歴史に名を残すのは、深刻な危機にうまく対処できた場合のみ。世界的なリーダーは、例外なく戦争や経済危機を経験している。

新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的な大流行)は、犠牲者の多さ(今後1年半の間に世界で数百万人の死者が出る可能性がある)、経済的ショック(既に世界の景気は崖から転げ落ちている)の両面で、第2次大戦後最大の危機だ。主要国の指導者はどう対処しているのか、それぞれのリーダーシップを評価してみよう。

■ドナルド・トランプ 
現在の危機には事実に基づいた姿勢と、冷静かつ公共心にあふれたリーダーシップが求められている。トランプ米大統領はその点で落第だ。前記の必要条件の対極にある人物であることは、支持者も認めざるを得ないだろう。この時期に、自分が出演したテレビの視聴率を自慢したり、新型肺炎を単なるインフルエンザと同様に扱った本人の発言を使用した野党・民主党の選挙広告に訴訟をちらつかせたり。さらにトランプは州知事からの「感謝」の度合いによって、特定の州をえこひいきしている。与党・共和党の政治家が知事を務めるフロリダ州にはすぐに連邦政府の援助を送り、知事が民主党のニューヨーク州には嘲笑を浴びせた。

■安倍晋三 
2、3カ月前まで、日本の安倍首相はおそらく世界の自由民主主義陣営で最も重要なリーダーだった。政治的パワーは最高潮に達し、東京五輪のアピールでも称賛を集めた。だが現在、危機に当たり断固たる態度を示し、明快で大胆な発言を続けているのは東京都の小池百合子知事だ。小池に対しては、パンデミックよりも自分の評判を気にしているという批判も出そうだが、政治の世界では「正しいが弱い」より「正しくないが強い」ほうが望ましいケースもある。この時期に強さを見せた小池との比較で、安倍はつらい立場に追い込まれた。

■ 文在寅(ムン・ジェイン)
危機が訪れると、社会に不安とパニックが広がる。パニックになると、人々は1つ旗の下に結集し、自国のリーダーを支持する。その期待にリーダーがうまく応えられれば、支持は長期的なものとなる。韓国の文大統領はその典型例だ。韓国の新型肺炎への対応は最も印象的だった。当初は危険なほど感染率が高かったが、その後予想以上にうまく感染拡大を抑え込んだ。文は4月15日の総選挙に向け、力強く歩を進めている。政権支持率は50%を超え、与党は野党に15ポイントの差を付けた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story