コラム

イートイン脱税問題、そもそも外食は贅沢なのか?

2019年11月05日(火)19時10分

もっと一般化して、夕食の場合、きちんと食材を買ってきて調理できる場合と、仕事帰りに外食で済ます場合、これも内食の方が生活に余裕があって贅沢と言えるのではないでしょうか? 朝食にいたっては、自宅でとりあえず食べてから出勤するのと、途中でスタンド的なところで食べるのでは、どう考えても内食の方が余裕があって贅沢な感じがします。

コンビニのイートインも同様です。同じように弁当を買って食べるとして、自宅でゆっくり食べるとか、職場の自席や休憩スペースで食べる場合と、「イートインで食べなくてはならない場合」を考えると、もちろん例外はあると思いますが、「イートインが贅沢」だということはまずないと思います。

持ち帰りよりも余裕がないケースも

コンビニのイートインで食べるというのは、基本的に急いでいる、孤食であるという特徴があります。営業先から営業先へ向かう途中であるとか、帰宅途中であるとか、場合によっては派遣社員なので派遣先の職場の休憩スペースは使えないとか、自席での飲食が禁止されているといった「困難」があるからイートインを利用するという場合もあるかもしれません。

さらに言えば、同じように「外で食べる」にしても、飲食店ではなく、コンビニのイートインを利用するというのは、時間を節約するためという動機が多いのではないでしょうか。

そう考えると、人間の自然な感情ということに照らして、そもそも「外食が内食より贅沢」という価値観は、相当に崩れているし、場合によっては逆転していると思われます。その中でもコンビニのイートインというのは、贅沢でもなんでもなく、持ち帰りよりも余裕のない食事になるケースが多いということが言えます。

それなのに、脱税幇助などという悪口を叩かれるのを恐れて、奇怪な「脱税禁止のアナウンス」がリピートされるというような「シュールな空間」を作り出しては、イメージダウンは必至ではないでしょうか。

とは言え、コンビニ本部もこの件では被害者であり、本当に批判されるべきはイートインで急いで食事を済ませる人々の気持ちの分からない財務省であり、また与党の中で積極的にこの制度を推進した公明党であると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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