コラム

関電スキャンダルに潜む、見過ごせない3つの問題

2019年10月11日(金)17時15分

3点目は原発立地です。通常、加圧水型原子炉というのは、河川の沿岸に立地して冷却水を取水し、冷却に伴って発生する温水は河川に戻し、水蒸気は空中放出するというのが世界の常識です。ですが、日本の場合は河川の水質への風評被害や、水蒸気放出への感情的な恐怖心などが「判断の大前提」となる中で、立地は沿岸部の過疎地ということになっています。

そこで地元に対して、巨額なマネーを注入することで立地への同意をさせるという構造があるわけです。その結果として、コスト的に最も効率的で、安全面で最も理想的な立地「ではない」場所に原発が建設され、それがコストを膨張させるという構造が出来上がっているように思われます。

こうした「原発とカネ」の問題ですが、原発反対派は「全面的な稼働反対、新設反対」の理由の一つとして、この「原発とカネ」の問題を取り上げることが多いようです。一方で、エネルギー多様化の中で原発の部分稼働に賛成する立場からは、この「カネの問題」は必要悪として諦めているようなムードも伝わって来ます。

当面は脱炭素という問題も含めて原発の「即時ゼロ」はできない中で、今回の事件を契機として、「原発とカネの問題は切っても切れない」という賛成反対両派の「常識」にメスを入れていかなくてはならないと考えます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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