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ミシシッピに残る人種差別の遺産

Sin and Salvation in Baptist Town

Photographs by Matt Eich

ミシシッピに残る人種差別の遺産

Sin and Salvation in Baptist Town

Photographs by Matt Eich

深夜に街灯の少ない暗い街角でたたずむ若者。貧困と暴力に覆われたこの地区には人種差別の跡が今も深く残る

 ミシシッピ州グリーンウッドで行われた葬儀会場で、参列した若者を前に牧師はこう話した。「ぶらぶらしていても救われない。刑務所か墓に入るだけだ」
 2010年11月、18歳のブッタ・アンダーソンは、1年前に暴行した相手に射殺された。バプテスト・タウン地区で行われた彼の葬儀で、これまでも度重なる暴力を目にしてきた大人たちは、うなずきながら牧師の警告に聞き入った。

 アメリカ人の多くは、人種差別の無い社会に生きていると考えたがるが、現実は違う。南部の人種差別は経済的にも文化的にも残り、差別と貧困、暴力という負の遺産が渦巻いている。バプテスト・タウン地区に暮らす黒人の半分以上は貧困ライン以下の生活をしている。

 そんなバプテスト・タウン地区は、周辺地域からも隔絶されている。背景にあるのは、人種差別による搾取の歴史から生まれた恐怖心と不信感。ただ皮肉なことに、差別の歴史なくしてこの地区が存在しなかったのも事実だ。アンダーソンの兄もいとこも、彼より前に殺害された。牧師はこう続ける。剣を頼りに生きる人は剣によって死ぬ、と。

Photographs by Matt Eich

<2012年10月24日号掲載>

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