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ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
ポランスキーをちゃんと裁け
映画監督のロマン・ポランスキーにもう一つの性的暴行疑惑が持ち上がった。被害を訴えたのは、英女優シャーロット・ルイス(42)。5月14日に記者会見を開き、彼女が16歳のとき、パリのポランスキーのアパートで「最悪の方法で性的虐待を受けた」と述べた。ルイスは86年の映画『ポランスキーのパイレーツ』に出演しており、事件が起きたのはオーディションが行われていた83年のことだ。
会見でのルイスは性的虐待の詳細は明かさず、記者からの質問も受け付けなかったが、英デイリー・メールに対しては事件の経緯などを語っている。彼女は訴訟を起こすつもりはないが、ロサンゼルスの警察と検察に書面を提出し、ポランスキーの身柄がアメリカに移送された場合は自分の訴えも考慮してほしいと求めたという。
映画監督という立場を利用して少女に関係を迫った、というルイスの訴えが真実なら、ポランスキーは本当に卑劣な奴。それも少女暴行事件を起こして、アメリカから逃れてきた数年後のことなのだから。
ご存知のとおり、ポランスキーは1977年3月、俳優ジャック・ニコルソンの自宅で13歳の少女サマンサ・ガイマーに酒と薬物を勧めたうえでセックスをし、逮捕された。強姦など6つの罪に問われた裁判では「未成年との違法な性行為」の罪のみ認める司法取引を行ったものの、判決直前にアメリカからフランスのパリに逃亡(市民権も取得)。以来、アメリカには入国していない。
そして09年9月、スイスで身柄を拘束された。現在はスイスの別荘で軟禁下に置かれ、アメリカへの身柄引き渡しが待たれている。
ポランスキー本人は米当局が彼の身柄移送を求めているのは不当だとして、5月初めに「もう黙っていられない」と題する公開書簡を新聞に掲載。米当局を批判し、「公正な扱いを求める」と言っているが、少女をレイプしたうえ裁判の途中で逃げ出した人間がよく言えたものだと思う(事件当時、「合意の上だった」と言っているが、40代の男が10代の少女と結ぶ合意なんてどれほど信用できるものか)。
しかし理解できないのは、ポランスキーを擁護する声が多く聞こえてくること。例えば――。
■俳優ジョニー・デップ
「(ポランスキーの拘束が)なぜ今なのか? 彼ももう76歳で、かわいい子供と長年連れ添った妻がいる。あまり外を出歩くこともない」(1月、英インディペンデント紙に対して)
■俳優ピアース・ブロスナン
「彼の拘束にはショックだし、がっかりしたし、悲しい。なぜ今ごろになって? 彼の家族や子供たちを思うといたたまれない。彼のためにも、被害者の女性や家族のためにも、この件はもう終わりにしてほしい」(ポランスキーの新作『ゴーストライター』に出演し、2月のベルリン国際映画祭での記者会見で)
■映画監督ウディ・アレン
ポランスキーは「アーティストで、いい人」だし、「過ちを犯して、その代償は払っている」(開催中のカンヌ映画祭で。同映画祭では、ポランスキーの身柄をアメリカに引き渡さないようスイス当局に求める嘆願書が回っており、ジャンリュック・ゴダールを始めとする映画人らが署名している)
これはおかしくないか?
ポランスキーももう年寄りだし、事件から33年も経っているのだから許してやったら? と言いたいのだろうか。どんなに素晴らしい作品を撮ろうが、どんなに有名な映画賞を取ろうが、罪を犯した人は法に則って裁かれるべきだ。それとも映画界ではこんな話は日常茶飯事で、スネに傷を持つ人はどっさりいるから厳しく追及したくないのだろうか?
それならなおさら、ポランスキーはきちんと裁かれるべきだ。
――編集部・大橋希
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