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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
『幸福の黄色いハンカチ』リメークの評判
先日タイム誌のウェブサイトを見ていたら、トップページに映画『イエロー・ハンカチーフ』を紹介する見出しが踊っていた。『幸福の黄色いハンカチ』のリメークがハリウッドで作られたことは知っていたが、トップページで紹介されるほどいいってこと?
脚本不足に悩むハリウッドでは、外国映画のリメークが盛んに行われている。日本映画も『呪怨』『仄暗い水の底から』などのホラー映画から、『Shall We ダンス?』までいくつかの作品がハリウッドで作られている(リチャード・ギア主演の『ハチ公物語』のリメークはほとんど無視されていたが)。
そして今回の『イエロー・ハンカチーフ』。正直あまり関心を払っていなかったが、にわかに興味がわいてきたので、アメリカのメディアがどう評価しているかをチェックしてみた(アメリカでは2月26日に限定公開、日本では6月26日公開予定)。
ロサンゼルス・タイムズやサンフランシスコ・クロニクルを除き、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』がベースになっていることに触れている記事はほとんどない。日本の映画のリメークだと気付く人は少なそうだ。実は『幸福の黄色いハンカチ』の原作は、アメリカのフォークソングに触発されてピート・ハミルが書いた短編。アメリカの短編が日本で映画になり、それがまたアメリカに渡ったことになる。
高倉健の役を演じるのはウィリアム・ハート。賠償千枝子が演じた妻役にマリア・ベロ。若手のクリステン・スチュワート(桃井かおり)とエディ・レッドメイン(武田鉄矢)が脇を固める。大手メディアが作品を紹介したのは、『トワイライト』シリーズで人気者になったクリステン・スチュワートが出演しているから、というのが真相らしい(『イエローハンカチーフ』は『トワイライト』より前に撮影されている)。
とはいえ、作品に対する評価もそれなりに高いといえそうだ。とりわけウィリアム・ハートの演技が絶賛されている。「ハートは役を巧みに操り、俗っぽいストーリーを輝かせている」(ニューヨーク・オブザーバー)、「見る者を静かに圧倒する。寡黙でいながらスクリーンを支配する名演」(サンフランシスコ・クロニクル)、「表情をほとんど変えずに感情を表現している。気持ちを代弁するのは彼の目だ」(クリスチャン・サイエンスモニター、まるで健さんそのもの?)。
一方ニューヨーク・タイムズによれば、ハートと役柄は不釣り合い。「たとえ南部のしゃべり方を真似てみても、ハートが演じるブレットはどこか洗練されていて、本物の労働者には見えない。ブレットのDNAはハートに備わっていない」と手厳しい(アメリカ先住民の血筋を引く役を演じたエディ・レッドメインがイギリス人俳優であることも許せないらしい)。
もっとも、厳しい評価はニューヨーク・タイムズくらい。トップページで紹介したタイム誌は「不自然な設定や地域色に頼り過ぎる点など、小作品の欠点を備えている。それでもこの作品が持つ不思議な空気に夢中にならずにいられない」と書く。「とても愛すべき登場人物たちがどうなるのか、観客は見守りたくなる」(ロサンゼルス・タイムズ)。
残念ながら、高評価はヒットに結びついていない。7館で限定公開された最初の週末の興行収入は3万7000ドルだった。それでも日本映画のリメークがアメリカで批評家の目にとまった、というのはうれしい。まだ作品を見ていないので個人的評価はできないけれど。
ニューヨーク・オブザーバーはこう締めくくっている。「ハンカチがたなびくラストではティッシュは忘れずに」。ラストシーンの感動は、日米ともに変わらないようだ。
──編集部:小泉淳子
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