コラム

日独GDP逆転の真相

2024年02月21日(水)12時00分

過去2年の大幅な円安が起きたことよりも、2012年頃まで行き過ぎた通貨高に直面して、先進各国の中で日本だけが低インフレとともに低い成長率に直面した。これが、日独GDP逆転の本質である。

1990年代後半からデフレが長年解消されなかった背景には、保守的な政策当局者が脱デフレに不十分な対応に終始し、緊縮的な経済政策が続いたことが大きかった。そして、こうした政策姿勢には、「貨幣(通貨)価値」を高めることを重視する偏った貨幣観を、多くの人が抱いていたことが影響していた、と筆者は考えている。

そして、こうした偏った貨幣観が依然根強く残っていることが、大幅な円安やドルベースの名目GDPの低下を、必要以上に問題視する見方に影響しているのかもしれない。ただ、貨幣価値を高めることに拘り過ぎると経済成長を阻害してしまう、ことを我々は教訓にするべきではないか。

 
 

日本>ドイツと再逆転する可能性は十分ある

ところで、2023年のGDPの日独逆転は、為替市場の変動がもたらした部分が大きいが、今後過去2年のような円安が続く可能性は高くないだろう。日本経済が正常化の道筋を辿りつつある中で、大幅な円安は修正される余地がある。また、デフレ完全脱却とともに、日本の名目GDPは今後伸びると伸びると予想される。このため、2024年以降、ドル換算の名目GDPでみれば、日本>ドイツと再逆転する可能性は十分ある、と筆者は考えている。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。著書「日本の正しい未来」講談社α新書、など多数。

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