若かりしショーケンと田中邦衛の青春映画『アフリカの光』をDVDでは観ない理由
ストーリーはこれ以上ないほどに平板だ。アフリカに船で行くことを夢見る2人の男が、北海道の港町で冬を過ごす。生活のために2人はイカ釣り船に乗る。港の女と知り合い体を重ねる。2人はけんかをして1人は故郷に戻る。結末は覚えていない。おそらく結末が意味を持つ作品ではない。覚えているのは、2人の男のだらだらとした日常。そして唐突にインサートされるアフリカのまぶしい光に満ちた数秒のカット。
生きることの切なさを実感した。......無理やりに言葉にすればそういうことになるのかな。いや無理やりに言葉にする必要はない。名画座の窮屈な椅子に座ってスクリーンを凝視する僕の体中に、この映画は深く突き刺さった。それは確かだ。
それからもう30年以上が過ぎた。この原稿を書きながらネットで検索したら、DVDは市販されているようだ。でも観ない。観たくないわけじゃない。でも観ない。そんな映画が1本くらいはあってもいい。
『アフリカの光』
©1975 TOHO CO., LTD.
監督/神代辰巳
出演/萩原健一、田中邦衛、桃井かおり、高橋洋子
<本誌2020年2月18日号掲載>
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