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テンセントの「ミニプログラム」がアップルの「アップストア」と全く異なる理由
2017年に北京で行われた展示会での騰訊控股(テンセント)ブース Jason Lee-REUTERS
<中国メガテックの一角を成すテンセントは微信(WeChat)で知られ「中国のフェイスブック」とも呼ばれることもあるが、同社がいま注力している新しいサービスは、スマホアプリの概念まで変えてしまう可能性がある>
※本稿は、田中道昭『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。
BATHはバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイという、中国の巨大テクノロジー(メガテック)企業を指す言葉。その一角を成すのが騰訊控股(テンセント)で、中国でアリババと株式時価総額トップの座を争う巨大企業です。SNSで急成長したことから、テンセントを「中国のフェイスブック」と呼ぶ人もいます。しかしテンセントは、実際には、知れば知るほどフェイスブックとの違いが際立っているのです。
フェイスブックはSNSで強固な基盤を築くことに特化して広告で稼ぐというビジネスを展開しています。対して、テンセントの事業領域はSNSを起点にしながらも非常に幅広く、ゲームなどのデジタルコンテンツの提供、決済などの金融サービス、AIによる自動運転や医療サービスへの参入、アマゾンのAWSのようなクラウドサービス、アリババと真っ向から勝負する「新小売」の店舗展開など多岐にわたります。もしテンセントとはどのような企業なのかと問われれば、「テクノロジーの総合百貨店」ということになるでしょう。
スマホアプリの概念を変える存在に?
テンセントの戦略の中で注目したいのが、ウィーチャットアプリで利用できる「ミニプログラム」です。同社の2018年第2四半期報告書では2ページを割いて解説されており、テンセントの注力ぶりがうかがえます。
ミニプログラムは2017年1月にスタートしたサービスで、簡単にいえば「アプリ内アプリ」の提供を可能にするものです。
たとえば、アップルが提供する「アップストア」に並ぶアプリは、すべてプラットフォーマーであるアップルの基本ソフト「iOS」に適した形で開発、申請して許可を受けたものです。つまり、アプリ開発者はアップルに応じた開発言語でアプリを開発し、アップルの審査を通さなければアプリを提供することができません。
この点、「ミニプログラム」は、プラットフォーマーへの申請が必要ありません。テンセントはアプリの開発者に、ウィーチャットをプラットフォームとして開放しているのです。つまりテンセントが認めたアプリであればウィーチャット上で提供できるわけです。
これは、これまでのスマホアプリの概念を変える可能性があります。中国では従来、アンドロイドスマホ向けのアプリストアが乱立する状況が続いていました。グーグルが撤退している中国ではグーグルプレイが使えず、バイドゥやテンセント、スマホメーカーなどが独自のアプリストアを運営しているからです。このためアプリ開発者は複数のストアへの対応が必要になるという問題がありました。
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