コラム

汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

2024年05月27日(月)14時40分

【先頭集団の競争の行方】

(質問:ネット上の公開データを使って学習する段階での競争のフェーズが終わり、次に非公開データで学習するフェーズに入るのか?非公開データで学習する権利をより多く買い取ったところが有利になるのか?)

(13:33)
非公開データの奪い合いにはならないと思う。公開データを学習するだけでも十分にAIは賢くなるので、学習のためにさらなる非公開データまでいらないと思う。賢くなったAIが、特定の領域の推論の際に非公開データを必要とすることはあるだろうけど。(湯川解説:推論とは、学習済みモデルがユーザーの質問に答える行為のこと。質問に答える際に、非公開データセットにアクセスし、そこで得た情報を参考にして回答を生成するという形で非公開データを利用するだけど、LLM自体を賢くさせる学習プロセスに非公開データは不要、という話)

(12:45)
この業界にいて学んだことは、1、2年先のことでも予測するのは非常に難しいということ。なので予言めいたことは言いたくないが、人間を超える知性の実現に向かって、いろんな人がいろんな方法を今後も試していく中で、ちょっとスピリチュアル的な表現を使えば、たまたまだれかが作ったモデルに突然「高度な知性が宿る」みたいな感じになるのではないだろうか。そんな感じで、だれかがブレークスルーを起こすのではないかと思っている。

【半導体とエネルギーの課題をどう解決するか】

(14:16)
半導体もエネルギーも大事だが、アルゴリズムが2倍効率的になれば、必要な半導体もエネルギーも1/2で済む。半導体工場、データセンター、電力などいろいろ問題はあるが、AIは多くの人にとって非常に価値のあるものなので、いずれ問題は解決されるだろうと思う。(湯川解説:この1、2年は半導体不足がAI進化の足枷になっていた。今後は電力不足が問題になると言われているが、AIのアルゴリズムを改良することで電力をそれほど必要としなくなるというのが同氏の意見。実際にGPT-4oはその点で大きな改良があったようで、消費者向けには無料で公開したし、企業向けにはこれまでの半額で使えるようにした)

【スマホの次のデバイスの可能性は】

(15:47)
すごく興味のあること。技術の進化にともなって、新しい形態のデバイスが可能になると思う。でもスマホは信じられないくらいすばらしい。これを打ち負かすのは簡単ではない。AppleのChief Design Officer(最高デザイン責任者)だったJohny Iveとはいろいろ議論しているが、次のデバイスを考え出すのは簡単ではない。

価格が問題なのではない。人々はたとえ低価格でも2台目のスマホは持ちたくないだろう。もっと全然違うものになるはず。それが何か分かっていれば、今頃私はそのデバイスの開発に夢中になっていると思う。ただ音声は次のデバイスのヒントだと思う。(湯川解説:Ive氏はスティーブ・ジョブズの片腕としてアップル製品のデザインを手掛けてきた人物。Ive氏と協議していると報道され話題になっているが事実だったもよう。でもどうやらまだ具体的な製品アイデアにはなっていないようだ)。

(23:57)
いろいろな用途にとってビジュアルUIは非常に便利。それを音声UIに変える必要はない。それぞれのタスクに合ったUIというものがあるのだと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story