コラム

汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

2024年05月27日(月)14時40分

【いつGPT-5をリリースするのか】

(2:41)
過去2、3ヶ月でGPT-4が大きく改良されたか気づいた人も多いと思う。これがこれからのプロダクトリリースの形にしたいと思う。劇的に進化したプロダクトを1年ぶりにリリースするよりも、少し進化した時点で小出しにリリースするほうが、社会にとっては受け入れやすいと思う。(湯川解説:劇的に進化したプロダクトをリリースすると、拒絶反応を示す人が多くなることに気づいたのだという。なのでGPT-4 TurboやGPT-4oというように、継続的、段階的にプロダクトをリリースしている。とはいえGPT-5を出さないというわけではなく、「次の大型ローンチ」という表現をしきりに使っているので、GPT-5がまもなくリリースされることは間違いなさそう)。

(4:29)
われわれが本当にしたいことは、進化した技術を無料でより多くのユーザーに届けること。すごいAGIが未来を引き連れてくるのではなく、多くの人々に未来を発明してもらいたい。その方向で進んでいると思う。今GPT-4レベルの技術を無料で提供できていないことは本当に悲しい。(湯川解説:なのでGPT-4oを無料で解放した)

【オープンソースの台頭をどう見るか】

(6:19)
コスト削減と反応速度の短縮は非常に重要だと考えている。研究開発的にはまだ始まったばかりなので、いつ劇的なコスト削減と反応速度の短縮を実現できるのか明言はできないが、そうすることが我々にとってもユーザーにとっても重要だし、可能だとは考えている。(湯川解説:コスト削減の観点では当然オープンソースの勝ち。また最近は反応速度が短いオープンソースモデルが登場している。OpenAIは、オープンソースに負けないように、コスト面、速度面でモデルの開発を続けているということ)

(7:13)
クローズドソースもオープンソースも、それぞれに重要な役割を担っていると思う。われわれのミッションはAGIを開発して多くの人がその恩恵を受けること。そのためにどうすればいいのかというわれわれなりの考え方があるし、多くの人がその考え方に賛同してくれている。もちろん違う考え方の人もいるが。(湯川解説:OpenAIの考え方とは、最先端のAIモデルをオープンソースで公開してしまえば、人類に危害を与えるAIモデルの開発に悪用される可能性がある、というもの。最先端技術はまずはクローズドでリリースし、その技術が引き起こす社会変化について社会が十分に理解し、その対応策を議論し用意できた段階でオープンソースとして公開するほうが安全だというもの)。

AIの技術開発は大きなエコシステムになっていて、オープンソースでAIモデルを開発する人たちがいるというのはいいことだと思う。僕自身はスマホに搭載できるようなオープンソースのAIの誕生を待っている。

(9:06)
競合他社よりも常にかなり先を行くことができるのではないかと思っている。というかそうでありたいと思っている。一方でコア技術ではない周辺領域にも価値を創造しないといけないと思う。それは他のビジネスと同様、昔ながらのやり方で価値を作っていくしかない。(湯川解説:この部分の発言に、「自分たちの技術、特にこれからリリースするGPT-5の方が、Llama3のような競合のオープンソース技術よりもまだまだ先行している」という自信を感じることができる。一方でオープンソースの追い上げに脅威を感じるので、周辺の事業も手がけないといけないと考えているようだ。この周辺事業とは、例えばGPTストアのようなもの。ユーザーが簡単にカスタムGPTを開発できるツールを無料で提供することで、スマホのアプリストアやユーチューバーのようなエコシステムを構築しようということ。今回の5月13日の発表で、GPTストアを無料ユーザーにまで解放したのは、こうしたエコシステムを盤石なものにしたいからだろう)。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story