コラム

台湾のコロナ対策から学ぶ企業デジタル化のコツ

2020年06月09日(火)17時10分

デジタル化の進み具合を3つの段階に大別すると、紙の情報をデジタルに置き換えるのが第一段階。第二段階は、一部の業務を自動化し、データ、AIを活用するレベル。第三段階は、組織全体にデータ、AI活用が広く普及し、アナログとデジタルが融合しているレベル。台湾にはvTaiwanという市民からボトムアップで立法制定できるプラットフォームがある。そのプラットフォームを通じてある女子高生がプラスチックのストローの廃止を訴えたのが、法律として成立した経緯がある。台湾は第三段階に入っていると大植氏は言う。

またタン氏のモットーは、「徹底的な透明性」。「その結果、政府と国民との距離が近づき、コロナ禍への政府の対応に対する国民の満足度は80%を超えている」と大植氏は分析している。

さてこれからもコロナ対策が不可欠の日本企業にとって、台湾の施策から学べることはなんだろうか。

Yukawa200609_3.jpg

まずは台湾の事例から見て、デジタル化が進めば進むほど変化に強い体質を作ることができることは明白だ。また大植氏は「デジタル化が進めば顧客や社員との距離を縮め、満足度を上げることができる。そのためには思い切った若手実力者の抜擢と同時に、外部の力を活用し、社内体制の両輪を回すことが重要」と力説している。

「コロナによって社会に不可逆な変化が起こりつつあり、今デジタル化をどう推進するかで今後優勝劣敗が一気に進む可能性がある。コロナ禍が終わったからといって変革を棚上げにすべきではない。ただちに着手すべきだ」と語ってる。

リモートワークが増える可能性がある、飲食店などは打撃を受ける、などといった今すぐにでも分かる社会変化もあるが、一方で風が吹けば桶屋が儲かる式に、連鎖反応の結果、自分の業界や会社が思わぬ影響を受けることもあるだろう。withコロナ、afterコロナといった長期にわたる社会構造変化を慎重に読み解いて、それに合わせて体制を抜本的に組み立て直す必要が出てくるだろう。「これまでの経営戦略が機能しなくなる可能性があり、目先の経費削減や効率化だけでは今後の構造変化に対応できない。戦略全体の見直しと自社の強みの再定義、強化に取り組むことが重要」と大植氏は強調している。

Yukawa200609_4.jpg

===================================

【お知らせ】アンケート結果解説やWith/Afterコロナ時代のDXフレームワークを紹介するオープンセミナーを特別配信

エクサコミュニティでは、企業アンケート結果の解説やエクサウィザーズ独自のWith/Afterコロナ時代のDXフレームワークを紹介するオープンセミナーを6月12日(金)に配信します。セミナーでは、「日本企業のコロナ対応状況はどうなっているか?進んでいる点はどこで、課題は何か?​」(アンケート結果からポイントを解説)​、「日本企業が今後行っていくべき具体的なアクションは何か?​」(エクサウィザーズ独自のWith/Afterコロナ時代のDXフレームワークを紹介)​、「先進企業はWith/Afterコロナの時代をどのように強く乗り切ろうとしているか?​」の3つのテーマに沿って、年間200案件超のAI導入をしているエクサウィザーズによる分析や事例紹介をもとに、実践的なフレームワークやプロセスの解説を実施します。

タイトル:エクサコミュニティ特別講座「アフターコロナ時代のDX(実践編)」
日時:6月12日(金)16:00-17:30
登壇者:株式会社エクサウィザーズ執行役員大植択真 視聴申込
https://peatix.com/event/1502991/view

20200616issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story