コラム

「シリコンバレーの太陽」とまで称された「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に対する海外の評価を集めてみた

2019年09月17日(火)18時00分

ソフトバンクのさじ加減一つで業界の勢力図は変わってしまう、という勢い winhorse-iStock

<シリコンバレーで巨大資金を動かす投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」について、海外の投資家から質問を受けることが増えてきた。熱い注目の理由を説明する>

エクサウィザーズ AI新聞から転載

最近海外の投資家から、ソフトバンク・ビジョン・ファンドに関する質問を受けることが増えてきた。ちょっと気になったので、最近のソフトバンクや孫正義氏、ビジョンファンドに関する海外の評価を調べてみた。

米Business Insider誌のAlexei Oreskovic氏は、「過去2年間ほどは、シリコンバレーのスタートアップや、投資家、起業家は、ソフトバンクという巨大な太陽の周りのまわる大きな星座になっている」と表現している。

同誌は4月の「ビジネスの世界を変える100人」という特集の中で孫正義氏を取り上げ、同氏をシリコンバレーの新しいキングメーカーと評している。キングメーカーとは、だれを次の王座につけるかを決めることのできる、本当の陰の実力者のことを言う。同氏はビジョンファンドの莫大な資金を使って、どの領域でどの企業を覇者にさせるのかを決めることができる、テクノロジー業界の陰の実力者だというわけだ。

孫が頭脳の97%を使って投資

孫正義氏をシリコンバレーの新たなキングメーカーにさせたソフトバンク・ビジョン・ファンドは、どのようなファンドなのだろうか。

ウィキペディアによると、2017年にソフトバンクやサウジアラビアの副皇太子などによって発足した投資ファンドで、投資先の選別などの運用面はソフトバンクが行うという。

今年のソフトバンクの株主総会で孫氏は、ビジョンファンドに触れている。それによると、世界中にはベンチャーキャピタルが数千社あり、その2018年度の調達総額はビジョンファンドを除くと約8.6兆円。ところがビジョンファンドは2社だけで、10兆円を超える資金を調達したという。世界中のベンチャーキャピタルを集めた投資総額を超える額を、ビジョンファンド1社だけで運用しているわけだ。

金額だけではない。ビジョンファンドの体制も半端ない。孫氏は「ビジョンファンドを始める以前の18年間、アリババやヤフーなどに投資してきた。2、3人のアシスタントを使って趣味的に投資判断してきた。自分の時間や頭脳の3%くらいを投資に充てていた。しかしビジョンファンドでは専門家集団を作り、投資にわたしの時間や頭脳の97%を充てている」と語っている。投資の専門家として元ドイツ銀行のRajeev Misra氏が部下を連れてビジョンファンドに参画しているほか、孫氏は世界中から投資の専門家を集めてきており、 スタッフ数は株主総会の時点で415人。孫氏によると、今後1000人体制に拡大する考えだという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750

ワールド

ノルウェーで欧州懐疑派政党が政権離脱、閣僚の半数近

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、方向感欠く 個別物色は活

ビジネス

午後3時のドルは154円台を上下、トランプ関税や日
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story