コラム

ロボット×AIの領域がブルーオーシャンである理由

2019年07月01日(月)19時00分

ロボットとAIの組み合わせには可能性が溢れているが、両方わかる人材は世界的にも少ない imaginima-iStock

エクサウィザーズ AI新聞から転載

<高性能ロボットをはじめハードウェアで名を馳せる日本メーカーだが、その地位は揺らぎ始めている。躍進する海外メーカーと戦うために必要なのはソフト、ハードの協働だ>

ロボット×AIの領域は、これから最も大きな可能性を秘めている領域、ブルーオーシャンだと言われる。ブルーオーシャンとは、血で血を洗う過当競争のレッドオーシャンの逆で、今後大きな成長が期待されるのに競合他社がほとんどいないビジネス領域のことだ。

早稲田大学の尾形哲也教授によると、ロボット産業はAIを搭載することで、安価で汎用性のあるロボットを開発できる可能性があるという。安価で汎用性のあるロボットは、今はまだ存在しない巨大な市場を作り上げるかもしれない。

一方で同教授は、ロボットとAIの両方の領域を十分に理解している人材が極めて少ないと指摘する。つまり両方の領域のスキルを身につけた人材をいち早く確保できれば、巨大な市場を手中に収めることが可能というわけだ。

AIが可能にする安価で汎用性の高いロボット

現在主流の産業用ロボットは、いわば専用機だ。特定の作業が完璧にできるようにハード、ソフトともに開発されている。高性能ではあるが、高価でもある。高性能で高価な専用機ロボットは、同じ製品を大量に生産する大手の工場であれば導入しても十分にペイするが、少量多種の作業をこなさなければならない中小の工場では高くて手が出ないのが現状だ。

ところがAIを導入することで、エンジニアがロボットの制御プログラムの開発に大量の労力と時間をかけなくても、AI搭載ロボットにお手本となる動きを少し教えるだけで、各種作業を自分で学習できるようになってきている。

事実、尾形教授が研究機関や複数の企業と共同開発したロボットは、まずタオルを折りたためるようになった。その後、サラダの盛り付けができるようになり、今では粉や液体の薬品を計量できるようになった。1つのAIがいろいろな作業を学習しはじめているわけだ。

<参考記事>マルチモーダルAIロボットは匠の技を再現できるか インターフェックス大阪で見た世界最先端

1つ1つの作業をプログラミングで制御しなくて済むので、プログラム開発コストが大幅に削減される。その上、専用機ロボットを何台も購入しなくていい。AIの進化を受けて、安価で汎用性の高いロボットがこれから数多く登場することになるとみられている。

安価で汎用性の高いロボットはまず、中小企業の工場に導入されるだろう。レストランなどのサービス業の店舗内にも配置されるかもしれない。将来は、一般家庭にも入っていくかもしれない。将来の市場規模を推計できないほど、その可能性は無限だ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管

ワールド

アングル:シンガポールの中国人富裕層に変化、「見せ

ワールド

チョルノービリ原発の外部シェルター、ドローン攻撃で

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story