コラム

「悟りってどんな状態?」悟った50人に心理学的手法で詳しく聞いてみた結果とは(TransTech Conferenceから)

2019年02月07日(木)17時30分

また心を乱す外部要因を持ち続ける人もいる。PNSEの最終段階に到達した人でも外部要因を排除せずに持ち続けている人がいるが、そうした人には心の乱れはなく、わずかに身体的に違和感を感じる程度だという。

被験者50人の中には夫婦がそろってPNSEに入っているカップルが4組いた。1組の夫婦は、心を乱す外部要因があることで、かえってPNSEの先の段階にまで進めた、と答えている。ただ何年たってもその中心となる外部要因を乗り越えることができず、結局離婚したようだ。

また外部要因に何年も悩まされた結果、PNSEの状態から普通の意識状態に戻ったケースが2件あった。普通の状態に戻っても2週間から4週間でPNSEに戻ったが、また同じ外部要因の中に入ればPNSEから押し戻されたと答えている。

外部刺激に対する反応の変化

認知も、思考や感情同様にPNSEに入ると変化する。そして思考、感情同様にPNSEの段階を進むにつれさらに変化していくようだ。

PNSEに入った人とそうでない人の認知のあり方で、大きくことなるのは2点。1つは「今」への集中、もう1つは、外部刺激に対する心の反応の仕方だ。

PNSEに入ると、雑念が減少していくので、過去を思い出したり、未来を思い悩んだりしなくなり、その結果、今、目の前にある事象に集中するようになる。

雑念がない分、感覚が鋭くなり、視覚だけでなく、聴覚や嗅覚、皮膚感覚など5感を総動員して、今の目の前の事象を深く味わおうとするようになるという。

PNSEの初期段階では、その後の段階に比べて、過去や未来の思考に引きずり込まれることが多いらしい。後ろの段階になると、目の前の体験にしっかりと根付くようになり、最終段階では、ほぼ完全に「今」に没入し、3次元のものが2次元に見え、世界が止まったように感じるらしい。

認知に関するもう一つの大きな変化は、外部刺激に対する心の反応の変化だ。

自動車を運転中に、別の車が目の前で急にレーン変更してきたとき、PNSEの初期段階の人は一瞬イラっとして脊髄反射してしまうが、すぐに通常の平穏な心に戻るという。PNSEに入る前までは、イラッとした状態が長引いていた、と答えている。被験者に自己分析をしてもらうと、自我の感覚が拡大したため、ちょっとしたことでバカにされたと傷つかなくなったからではないかと答えたという。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story