コラム

「悟りってどんな状態?」悟った50人に心理学的手法で詳しく聞いてみた結果とは(TransTech Conferenceから)

2019年02月07日(木)17時30分

減少し、消滅する思考

自我の認識の変化に加え、PNSEに入った多くの人が気づくのが、思考の量の変化だ。ほとんどの人が、思考が大幅に減少したと答えている。思考が起こる場合でも、思考は目の前を流れていって、それにとらわれることが少なくなったという。

この場合の「思考」とは、自分自身に関する雑念のことで、通常の人生を送る上で必要な思考による問題解決能力が減少したわけではない。PNSEの被験者と話していても、通常の人と同様に会話が成立するという。事実、PNSEの被験者に聞くと、雑念が減少したことで大事な思考に集中できるので、問題解決能力はかえって増強されたと答えている。

PNSEの最初の段階では、ときどき雑念に引き込まれることがある。もちろん、気づくとまた雑然のない状態にすぐに戻ることができるという。ところがPNSEの段階が進めば、雑念に引き込まれる頻度は徐々に減少し、最終段階に入ると雑念は一切起こらなくなるという。

減少するネガティブな感情

感情も思考と同様にPNSEに入ると減少し、PNSEの段階が進めば進むほど減少していくという。

PNSEの初期の段階の人は、ポジティブな感情からネガティブな感情までを感じることがあると答えている。ただ感情を認識しても、その感情を引きずることは少ないという。

またPNSEの段階が進むにつれて、ネガティブな感情は減少し、ポジティブな感情だけが残るようになるようだ。

さらにPNSEの最終段階では、一切の感情を感じなくなるという。ただその直前の段階では、非常に強い「思いやり」「喜び」「愛情」が混ざったような1つの感情になるという。Martin博士が「最終段階の直前が人間にとって一番幸せでは」と語るのは、この感情に常に包まれている状態だからだ。

多くの人はPNSEの初期の段階から徐々にこの「一番幸せな段階」までに進むが、ごく一部の人は直接この段階に着地し、その後すぐに感情のない段階まで移行したと答えている。

PNSEに入った人は、感情を引きずらなくなるが、心の平穏を大きく乱す外部要因に遭遇し続けることがある。

何人かはこの心の平穏を乱す外部要因を排除しようとする。例えば配偶者が心の平穏を乱すことに気づき、離婚した人が何人かいた。

一方で、平穏を乱す要因を排除せずに、心が乱れなくなるまで、そのままの生活を続けた人もいる。心が乱れなくなるまでどれくらいの期間がかかったかをたずねたところ、一番短かったのが2週間。一番長かったのが7年間だった。心が乱れなくなるまでに時間がかかった人は、幾つもの外部要因が複雑に絡み合ったケースの場合が多く、1つ1つの要因を順番に乗り越えていくのに時間がかかるようだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅続伸、史上最高値更新 日銀人事が追い

ワールド

豪首相、爆弾脅迫で公邸から一時避難 不審物は見つか

ワールド

米韓、3月9日から合同軍事演習 戦時作戦統制権移管

ワールド

メルツ独首相が訪中、関係深化で李強首相と一致
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違…
  • 7
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 8
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story