コラム

これが解決されればビジネスが変わる。最新AI研究トレンド7選

2018年08月08日(水)14時36分

階層的強化学習

──階層的強化学習ってどんな手法なんですか?強化学習って、飴と鞭を設定しておいて、あとはAIに自分で試行錯誤させて学習させる方法ですよね。自動運転の強化学習なら、シュミレーターの中で、レーシングカーが速く走れればポイント増、衝突すればポイント減と設定しておいて、レーシングカーに試行錯誤させて、どんな風にハンドルを切ってアクセル、ブレーキを踏めば、衝突せずに速く走れるかを学習させる方法ですよね。

遠藤 そうです。レーシングカーのシミュレーションの例では分かりにくいですが、普通一連の動作って幾つかの動作ブロックに分けられます。例えば、跳び箱を飛ぶという動作なら、助走をつけるという動作ブロック、踏み台の上でジャンプするという動作ブロック、跳び箱の上を手で叩くという動作ブロック、跳び箱を飛び越えるという動作ブロック、着地するという動作ブロック、などに分けられます。それぞれのブロックで強化学習し最適化したものを、最終的に組み合わせる。階層的強化学習って、そんなイメージです。

参考情報:Learning a Hierarchy

マルチタスク学習


参考情報:マルチタスク学習

──マルチタスク学習って何ですか?複数のことを同時にするということですか?

遠藤 まあそうですね。普通AIって1つのタスクしかしないように設定されてますよね。例えば画像認識のAIなら、写真を見せれば、それが犬なのか猫なのか、人間なのか、建物なのかを認識し分類します。マルチタスク学習なら、分類だけではなく他のタスクも同時にしてくれます。

──例えば?

遠藤 例えば画像認識の場合は、1つのAIが、ピントが合っていない写真を除外するタスクと、分類のタスクの2つを同時にやってくれるというイメージですね。

──具体的にはどんな仕組みになっているのですか?

遠藤 画像認識AIの場合、ネットワークを特徴抽出の層と分類の層に分けることができますよね。

──はい。例えば顔認識の場合、特徴抽出の層には、点や線、エッジなどを認識する層、次に点や線を組み合わせて目や鼻といった部品を認識する層、次に目や鼻を組み合わせて顔全体を認識する層などがあって、一人一人の顔の特徴を掴むわけですね。特徴を掴んだら、それがAさんなのか、Bさんなのかを分類する。大きく分けると特徴抽出の層と分類の層があるわけです。

遠藤 そうです。マルチタスク学習では、特徴抽出の層はそのままなんですが、そこに分類のタスクの層、ピントが合ってない写真を除外するタスクの層など、2つ以上のタスクの層がくっついているわけです。

──なるほど。ほかにどのような例がありますか?

遠藤 自動走行のための画像認識では、1つの画像を見せれば、その画像のどの部分が道路で、どの部分が建物、どの部分が道路標識であるかを分類するタスク、標識は制限速度の標識なのか駐車禁止の標識なのかを分類するタスク、写っている物体の距離を測るタスク、などを同時にこなすことができます。

また複数のタスクを出力とした学習をさせていると、1つのタスクで学んだことを別のタスクで利用できるというメリットも、マルチタスク学習にはありますね。
──標識として分類された部分のデータを、何の標識かを分類するタスクでも利用できるということです。

遠藤 そうですね。マルチタスク学習は、既によく使われる手法です。これからは自動走行だけではなく、いろいろな用途に利用されていくのだと思います。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ウォルマートが上場先をナスダックに変更、崩れるNY

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ワールド

インド、対米通商合意に向け交渉余地 力強い国内経済

ワールド

トランプ氏、民主議員らを「反逆者」と非難 軍に違法
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story