コラム

これが解決されればビジネスが変わる。最新AI研究トレンド7選

2018年08月08日(水)14時36分

アルゴリズムの公平性

──これはどういう問題なんですか?

遠藤 過去のデータが特定のグループに不利な内容を含んでいると、意図しなくても不公平な扱いになる、という問題です。

──ん?例えばどんな問題ですか?

遠藤 例えば、社長さんと秘書の写真をいっぱい集めてきてAIに学習させるとします。それで新しい写真を持ってきて学習済みのAIに見せて、その写真が社長か秘書かを予測させるわけです。そうすると、AIは男性の写真なら社長と答え、女性の写真なら秘書と答えるかもしれません。

──過去のデータは、男性の社長、女性の秘書というデータが圧倒的に多いからですね。

遠藤 そうなんです。女性社長の写真を見せても、AIは秘書と判断してしまう。

──もし社長への対応と秘書への対応が異なるようにプログラムされた執事ロボットがいるとしたら、女性社長に対して失礼な対応をしてしまうかもしれませんね。

遠藤 そうなんです。ほかにも検索エンジンで犯罪者の名前を検索すると、アフリカ系の場合犯罪歴の調査の広告が表示される。同じような犯罪を犯した人でも、アフリカ系苗字を持つ人のほうが目立ってしまうわけです。

──なるほど。では、この問題に対してどのような解決策がありますか?

遠藤 例えば人事採用AIだったら、公平性をアルゴリズムの中に入れてしまうわけです。もし人種や性別が不公平な結果につながるのであれば、人種や性別を考慮に入れないアルゴリズムにするということです。このほかにも、社会通念や法律をアルゴリズムに組み込もうという動きが盛んになってきています。

リアルタイム機械学習

遠藤 リアルタイム機械学習は、同じモデルを長年使っていると劣化してくるので、最新のデータを考慮してモデルを作り直す手法です。昔からある手法で、Amazonのレコメンデーションエンジンなどもこうした手法だと思います。

──新しいデータが出るたびに学習し直すのであれば、時間と電力がかかり過ぎませんか?

遠藤 ですので一からすべて学習し直さなくても、部分的にモデルを更新するような仕組みになっているわけです。

──継続的学習、リアルタイム機械学習が昔からある手法ということですが、昔からあるのにどうして今またホットな研究分野になっているわけですか?

遠藤 データの量、応用分野が増えてきているからでしょうね。より効率的にモデルをアップデートする手法が求められているのだと思います。

参考情報:ビッグデータ時代の機械学習アルゴリズム:オンライン学習

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、1カ月半内にサウジ訪問か 1兆ドルの対

ビジネス

デフレ判断の指標全てプラスに、金融政策は日銀に委ね

ワールド

米、途上国の石炭からのエネルギー移行支援枠組みから

ビジネス

トランプ氏、NATO加盟国「防衛しない」 国防費不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story