コラム

「バカにされよう。主流はこっちだ」デジハリ杉山学長が考えるAI時代の教育とは

2018年02月16日(金)12時30分

日本にいる人たちは日本のゲーム会社で大活躍していますし、ウェブ系なら自分のウェブ会社を作った人なんてごろごろいます。経済産業省独自の調査により大学別の学発ベンチャー創出数でベスト10にランク入りしまして、オリジナルコンテンツやオリジナルサービスで勝負している起業家も出ています。

──なるほど。ところで、これからのAI時代において、どういう能力が必要になってくるのでしょうか?ちょっと前ならプログラミングを学んだほうがいいと言われました。最近ではAIを学んだほうがいいという人もいます。

杉山 AIの研究者になるのは大変だけど、とりあえず分かったというレベルならそれほど難しくない。AIって日々どんどん使いやすくなっています。とりあえずAIを使うレベルというのは、教養科目みたいになっていくのかなって思います。プログラミングについてもハッカーレベルになる必要がないなら、向き不向き関係なくある程度まで学んで、すぐに実用に応用できるレベルにまで来ています。

つまりデジタル系は、ある程度使えるというレベルなら比較的簡単に身につけられる。ということは、人の中で何か事を起して仕事にしていくのであれば、むしろリベラルアーツが大事になってくるんじゃないかなって思います。これからも大学に存在意義があるのなら、それは社会に出る前にもう一度リベラルアーツというものをかじっておくということじゃないでしょうか?

──リベラルアーツってどういうものを指しておられます?

杉山 どうでしょう、普通に言えば歴史、哲学、宗教など、さまざまな人文系のもの。そしてもう少し博学的に宇宙とか動物とかもいいですし、それに対しさらに社会学的なもの。全部やるのは無理でも、いくつかをちゃんと取り組む。

さらにリベラルアーツの中に芸術というものを理解する力、芸術の持ってる意味を分かる力があると思います。ビジネスマンになるとしても、意外とそういうところに核があるんだと思います。

技術は当然必要です。プログラミングやAIって、今で言うところの「算数できないと困るよね」というようなレベルの話になっていく。なので当然、使えるレベルまでは身につける。その上で大事なのが、リベラルアーツなんだと思います。

──リベラルアーツって教えるもの?感覚を掴むものじゃないんでしょうか?大学で学ぶと、理屈っぽくなるだけじゃないでしょうか?

杉山 僕も、まったくその通りだと思います。だからうちの大学のリベラルアーツって長くやらない。90分の講義を8回。先生たちには、その学問の一番おもしろいところを話してもらう。興味があれば深く知るための道はいくらでもある。ネットでも深く調べられるし、専門のセミナーやスクールもあるでしょう。でも、そういう素晴らしい世界があるということさえ、子供達は知らされていないと感じます。

人類の歴史の中で、人間が積み重ねてきた知恵には、こんなにいろんなものがあるんだなって、分かってもらいたい。たくさん並べれば、どれかに気付きがあるはずです。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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