コラム

日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

2017年01月30日(月)15時00分

「Amazonが、われわれの事業領域に乗り出してくるのではないかと心配で仕方がない。彼らがわれわれと同じようなビジネスを始めれば、もはや勝ち目はない」。

参入のうわさだけで、ライバル社の株価急落

 Amazon Echoが未発売の日本でこのような話をすると、被害妄想狂のように見えるかもしれない。

 しかし米国の投資家は、こうした話には十分に信ぴょう性があると考えている。

 今年になって米国のタブロイド紙が、消息筋の話としてAmazonが自動車部品メーカーと契約を交わしたと報じた。タブロイド紙といえば、日本では駅売りのスポーツ紙や週刊誌のようなイメージ。センセーショナルな見出しで購買数を伸ばさなければならないビジネスモデルなので、大げさな報道や誤報も多い。

 その程度の情報にもかかわらず、自動車部品販売業Autozone社の株価は5.1%も下落した。1日の下げ幅としては過去1年間で最大だという。またAdvance Auto Parts社の株価は4.2%下落、O'Relly Automotive社は4%、Genuine Parts社は3%それぞれ下落した。

 Amazonが参入を決めれば、先行企業に勝ち目はない。米国の投資家はそう考えているということだ。

儲け度外視の敵には勝てない

 Amazonはメディア事業にも力を入れている。

 物を売るには、まずは消費者の耳目を集めなければならない。そこでメーカーや店舗はメディアに広告を打つわけだが、既存メディアの弱体化が進む中、Amazonはメディア事業者に頼ることなく、自らがメディアとして力を持とうとしている。

 その戦略の一環が、オリジナルコンテンツの配信だ。

 日本では、テレビや映画など既に作られたコンテンツをネットメディアが再配信する形が中心だが、米国ではネットメディアがオリジナルコンテンツを配信するケースが増えている。Amazonも例にもれずオリジナル映画に力を入れているが、昨年公開した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」がこのほど、アカデミー賞の作品賞を含む6部門にノミネートされたという。

 Amazonは、サンダンス映画祭でプレミア上映された映画の配給権を高額で買い続けており、ワーナー・ブラザーズなどの大手映画配給会社が一部市場から撤退する中で、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「Amazonが本気で映画ビジネスに乗り出した」と評している。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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