コラム

人工知能が加速させるボイス革命

2016年06月06日(月)17時00分

 対話エンジン技術のベンチャー、VocalIQ社によると、対話エンジンは主に4つの技術で成り立っているという。まずは音声を認識してテキストに変換する「音声認識」技術。テキストを「理解」する技術。理解に基いて、どのような応答をするのか決める「判断」技術。応答テキストを音声に転換する「音声転換」技術、の4つだ。

 同社のCEO、Blaise Thomson氏によると、音声認識の部分はDeep Learningの応用で急速に進化している。しかしそれ以外の技術は、想定シナリオをベースにした受け答えにとどまっているのが現状。想定される質問がくれば、それなりに受け答えができるが、想定外の質問にはまったく答えられない。

 iPhoneのsiriでも「今日の東京の天気は?」というような、ありがちの質問をすると的確に答えてくれる。しかし何にでも答えられるわけではなく、siriが想定しない質問をすると「すみません。理解できません」という答えが返ってくる。現状では、答えられない問いの方が多いくらいだと思う。

 同社は、その「理解」「判断」の技術の部分にもDeep Leaningを応用しようとしている。大量のデータを読み込ませれることで、「理解」「判断」の領域でも人工知能が成果を上げるはずだという。

Amazonに「待った」をかけることができるか

 4月にコラムを書いてから、この領域でのテック大手各社の動きが活発になってきている。

 Facebookはこのほど、Deep Learnignをテキスト解析に応用するための人工知能エンジン「DeepText」を開発したと発表した。対話エンジンの「音声認識」「理解」「判断」「音声変換」のうち、Facebookに投稿されたテキストを使って「理解」の領域の人工知能を賢くさせようというわけだ。

 Googleは5月に、Google Homeと呼ばれるスマートホームのプロジェクトを発表。核になるのは対話エンジンを搭載した卓上スピーカーで、Amazon Echoに対抗する製品を年内に発売する見通しだ。スマートホームの覇権争いではAmazonに遅れを取った形だが、音声認識ではAndroidケータイを持つGoogleに一日の長がある。音声認識の精度のよさでAmazonに追いつき追い越すことができるのだろうか。要注目だ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story