コラム

人工知能が万人のものに?米新興企業データロボットがヤバイらしい件

2016年01月28日(木)18時04分

「人間がこうした予測モデルを作ろうとすると、1つのモデルを作るだけでも、ものすごい時間がかかる。ところがデータロボットは、数十、数百という数のモデルを比較的短時間に自動的に組み合わせることが可能なんです」とシバタさんは言う。たくさんの異なる手法の予測モデルを組み合わせることで、単体のモデルでは到達できないほどに予測精度が高くなるのだという。

人間の仕事は前と後ろに

 データサイエンティストと呼ばれる職種の人たちは、これまでこうした予測モデルを考案することに多くの時間を使ってきた。データロボットのシステムは、その作業を自動化するだけでなく、何十、何百というモデルを自動的に組み合わせる。到底人間にはできないレベルの作業をも、こなしてしまうわけだ。

 そうなればデータサイエンティストは不要になるのだろうか。

「モデルを作る部分は、完全に自動化できると言っていいと思います。人間の作業は、モデル作りの前と後ろ。つまりモデル作成に必要なデータを集めて加工するところと、モデルが出してきた答えをアプリやプログラムにつなげるところになっていくでしょうね」とシバタさんは言う。

 モデルを作るためにデータロボットのシステムにどのようなデータを読みこませるのか。データを選ぶだけではなく、ときにはデータを変換したり、加工することで、モデルの精度が向上する。その作業は、これからも人間がすることで価値を出せる領域だと言う。

 もう1つは、モデルが出してきた予測結果をサービスに反映させたり、そこから新しいサービスを創りだしたりする部分。データロボットは生成されたモデルから自動的にAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェース、プログラム間をつなぐ接続部分)を作ってくれるが、そこから先の部分はユーザーが行う必要がある。「予測モデルはできても、施策が明確でないこともある。離反確率の高いユーザーにアプローチしたら更に離反確率が上がったなどということもあり、人間の役割もまだまだ大きい」とシバタさんは強調する。人工知能が出してきた予測データを踏まえて、どういうアクションを起こせばいいのか。そこを考えるのも、まだまだ人間の仕事だということだ。

止まらない進化 メジャーリーグのスカウトも利用

 とはいえデータロボットがAPIまで作ってくれるのは非常にありがたい話。シバタさんは「APIの自動デプロイなどはサービス化のためにはキーになる開発ですが、今まではモデルができてから開発に何カ月もかかっていました。これがデータロボットでは一瞬にして行われてしまうのです」と言う。簡単なアプリ画面を作り、サンプルデータさえ用意できれば、データロボットの人工知能は勝手に学習して予測モデルを作り、さらにはアプリと人工知能との間のデータの自動受け渡しの部分までもすべて自動的に作ってくれるわけだ。人工知能利用がここまで簡単になると、今後、人工知能につながるスマホアプリが多数登場してくることだろう。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10

ワールド

再送-ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 買春疑惑で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story