コラム

ソーシャルロボット「百花繚乱」時代に

2015年08月28日(金)17時22分

 またソーシャルロボットが、スマートホームのハブ的なデバイスになる可能性や、スマートフォンよりも少し高いくらいの価格設定が人気の理由としている。

 そしてソーシャルロボットの普及の兆しを示す例として、ソフトバンクのPepperが発売開始わずか1分で売り切れたニュースを挙げている。

 僕も最近の人工知能の急速な進化を受けてソーシャルロボットが今後ホットな領域になるのではないかと思っている。理由の1つは、Washington Post紙が指摘しているように、Pepperが好評を得ているから。大企業で新事業開発を担当している複数の友人から聞いた話によると、Pepperの成功を受けて、それぞれの社内でソーシャルロボットの開発計画が進んでいるのだという。

高性能人工知能をだれでも搭載できるようになる

 もう1つ理由がある。人工知能のプラットフォーム化が始まったからだ。人工知能の中でもディープラーニングと呼ばれる最新技術を使った対話エンジンを持っている有力企業は5社あると言われている。Google、Apple、Amazon、Microsoft、Facebookの5社だ。

 そのうちのAmazonが、Alexaと呼ばれる対話エンジンのAPI(技術仕様)を公開した。対話エンジンとは、音声で受け答えできる人工知能で、iPhoneに搭載されているsiriがその代表例だ。APIを公開することで、人工知能技術を持たないベンチャー企業でも、Amazonの対話エンジンにネットを通じて接続することで、自社開発のロボットに対話エンジンを搭載しているかのように見せかけることができる。

 ロボットに詳しいビジネスパーソンから聞いた話によると、Alexaは部屋の隅からの声でも正確に聞き取るなど、他社製の対話エンジンと比較しても非常に出来がいいのだそうだ。当面は英語での利用が中心となるのだろうが、Alexaが公開されたことで、ソーシャルロボットを開発しようというベンチャーが多数登場してくるであろうことが予測できる。

 一方、日本マイクロソフトは、女子高生人工知能「りんな」を開発しコミュニケーションアプリ「LINE」上で企業が利用できるようにしたと発表した。発表文によると「りんなで培われた自然な会話を行う技術は、様々な企業の人工知能、会話ロボットに対するニーズを満たす可能性が」あり、「すでにさまざまな企業が人工知能や会話ロボットを展開している日本市場には人工知能の大きな活用機会があるものと考え、りんなを日本で開発し」提供することに決めたのだとしている。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

解任後に自殺のロシア前運輸相、横領疑惑で捜査対象に

ビジネス

日産、米国でのEV生産計画を延期 税額控除廃止で計

ワールド

トランプ氏との会談、人質解放の取り組みなど協議=イ

ワールド

台湾、定例軍事演習「漢光」開始 司令部への攻撃を想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story