コラム

中国の民族問題を経済で語る「識者」たちの偽善

2021年06月23日(水)14時00分

マルクスの発展段階論をたどった社会がどこにもなかったことは、今や人類学の常識となっている。ただ、資本主義は搾取と利潤の追求という構造の上で成り立っているという「資本論」にだけは一理ある。ならば、モンゴル人とウイグル人をどのように搾取し、どれだけの利潤が現代中国を世界第2の経済大国として支えているかについても、論じるべきではないか。

経済にこだわる論客らは1つの問題を避けている。それは、中国政府による組織的な性犯罪と大規模殺戮である。どちらも経済的な視点では説明できないことを「賢い」彼らも知っている。

多数のウイグル人女性を集団で中国内地に移住させて性産業に従事させ、中国の「発展」を支えていることに彼らは目をつぶる。その点で、経済論者は偽善者が多い、と批判されても仕方あるまい。

最後に、経済で民族問題を論じる人たちは、最終的に中国政府と同じ結論に到達する。「俺と離婚したら、おまえはやっていけないだろう」「少数民族は漢民族の援助がなければ幸せになれない」という、家庭内暴力(DV)の愛好者のような暴論だ。

民族自決ほど人間を幸せにする理念はほかにないことを彼らは知らない。他者による抑圧を知らないからである。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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