コラム

「新人にどぶ板営業なんかさせて辞めたらどうする!」と介入してくる「ヘリコプター人事」の弊害

2019年01月31日(木)18時37分

まれに経営者が壁になってくれず、「当事者同士でうまくやってくれ」などと逃げ腰な姿勢をとることもありますが、こうなるともうお手上げ。できる限りリスクを減らしたい人事部の言い分が通ってしまいます。

ノウイング・ドゥイング・ギャップ

私は、クライアント企業の現場に入ると「理解=言葉×体験」という公式を必ず伝えます。

どんなに言葉をインプットしても、体験しなければ理解しようがない、ということです。

頭ではわかっているけど、なかなか体が言うことをきかない。わかっちゃいるができないことを「ノウイング・ドゥイング・ギャップ(Knowing-Doing Gap)」と呼びます。知っていることと、やっていることに、ギャップがある、という意味です。

この状態を抜け出すためには、無理やりにでも行動をすることです。

経験の浅い人に「やればわかる」ことを理解させるためには、まず行動してもらうことです。グダグダ考えていても仕方がない。やればわかることなら、やる必要があるのです。

にもかかわらず、何か新しいことをしようとするたびにヘリコプター上司やヘリコプター人事部が「まず行動しろなんて乱暴だ。新人にも意味がわかるように説明しろ」とか「マニュアルを整備しないと若手はわからない」などと介入してくると、いつまで経っても話が前に進みません。

意外と本人たちは、「まずはやってみますよ」「やってみないことにはわからないので、やります」と言っているのにもかかわらず、です。

ベテランになればなるほど、わかっちゃいるけど、なかなかできない......つまり現状維持バイアスがかかるもの。

ですから自分たちが「理屈がわからないことはできない」という考え方を持っていると、新人も同様に同じように考えるという先入観を持ってしまいます。

実際は、経験の浅い若い人ほどバイアスはかかりません。思考プログラムは、過去の体験の「インパクト×回数」でできています。過去の体験が乏しい若者たちは、まだ柔軟性があり、意外に「理屈がわからないことでもやってみよう」とするのです。

ベテラン社員の価値観で干渉されると、育つ若者も育っていきません。

私たちコンサルタントが苦労するのは、部長や課長の意識改革であって、若い人たちではありません。若者ほど、意外と短い期間で意識を変え、すんなりと新しいやり方に順応します。

先入観や思い込みが強くなっているベテラン上司や、現場のことを良く知らない人事部がナーバスになりすぎ、若い人たちの毎日の仕事に強く干渉する行為は「人材教育」の観点に反しています。放置はもちろんいけませんが、バランスが大切で、「甘やかせ過ぎ」は当然にダメなのです。

部下に強い関心を持つのは大切ですが、もっと大切なのはお客様です。事業はお客様で成り立っているのですから、その姿勢をもっとお客様に対して向けるべきです。社内ではなく、社外に目を向け、お客様やマーケットに対して、過干渉であるべきです。


プロフィール

横山信弘

アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタント。全国でネット中継するモンスター朝会「絶対達成社長の会」発起人。「横山信弘のメルマガ草創花伝」は3.5万人の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『営業目標を絶対達成する』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者。著書はすべて、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。年間100回以上の講演、セミナーをこなす。ロジカルな技術、メソッドを激しく情熱的に伝えるセミナーパフォーマンスが最大の売り。最新刊は『自分を強くする』。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、リオ・ティント株売却 資源採取産業から

ワールド

ドイツ外相の中国訪問延期、会談の調整つかず

ビジネス

ヘッジファンド、AI関連株投資が16年以来の高水準

ワールド

ロシア、米欧の新たな制裁を分析中 国益に沿って行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story