コラム

医療逼迫?政府与党は直ちにコロナ禍の医療緊急事態を改善せよ

2020年12月30日(水)16時06分

そしてこれから待ち受ける変異種は、感染力が1.7倍、これまで少なかった子供にも感染がみられるという。

世界はまだまだ新型コロナウイルスと闘っている。

国民の危機意識の高まりに合わせ、緊急事態に対応できる特措法改正を

新型インフルエンザ等対策特別措置法附則の一部改正と感染症法上の2類「相当」という定義で、現場判断で運用することにも限界が来ている。新型コロナの特性に合わせた特措法と感染症法を整備すべきではないか。

そして、多くの民間病院に手厚い協力金と医療従事者の臨時派遣体制を設けて、コロナ対応可能病院を圧倒的に増やす準備をすべきだろう。

「このままでは全国の必要な全ての医療提供が立ち行かなくなる。全ての日本国民が一致団結し新型コロナを打破する意を決するときは今しかない」(日本医師会中川俊男会長)──言葉は勇ましいが、この半年日本医師会としてコロナ対応できる病院の拡大に尽力したのか疑念も残る。

例えば、159万以上ある病床数において新型コロナ対応ベッド数が2万7235床しかないのは、医師会として最大の対応なのか。日本国民を一致団結させる前に、日本医師会の全会員は一致団結して緊急事態にあたっているのか。

但し中川会長としても法的根拠の明確な国の要請ないなかでは各病院の自主的判断に任せるしかないのかもしれない。

国民の多くは「医療崩壊寸前ぎりぎり持ちこたえている状態」という春からの情緒的なコメントの繰り返しに飽き飽きしている。

読売新聞の12/26-27の全国世論調査で66%が「全国で緊急事態宣言を出すべきだ」と回答した。一方で、菅総理は「今は緊急事態宣言を出すべきではない」と答えている。本来、統制を指向する政府と、個人の自由を求める国民の間で奇妙な意識の逆転減少が起きている。

皆、一部の国民の善意と一部の医療者の矜持頼みの「お願い」だけで、具体的な法律に基づく医療・防疫政策を出さない政府にうんざりしているのだ。

新型コロナ感染症を新型インフルエンザ等とみなす期間は、政令により(施行日から)2021年1月31日までと定められている。緊急事態は継続しているが、1年近くに渡る新型コロナに関する知見と国外の豊富な成功事例・失敗事例があるはずだ。

1月の特措法の審議では営業時短要請の支援に留まらず、都道府県知事が民間病院も含めた医療機関に(補償を伴った)より強力な指示・命令が、「本当の医療崩壊」の事態には可能なように、法制度の整備を行うべきだと考える。

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story