最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性
女性リーダー、ヘイトクライム - オレゴン州史上初『移民出身のアジア人女性 経済局長』- 差別を越えて
| 初のアジア人女性トップとして、ワーキングマザーとして
地域コミュニティーにおいて、これから力を入れていきたい分野。それは、『多様性と包摂性はあたりまえという環境の構築』です。
「オレゴン州だけでなく米国全体を見回しても、女性と人種マイノリティーがリーダーになっているケースは、まだまだ低いのが現状です。優秀で公平公正な人種・性別マイノリティーの人がもっと活躍するように、この社会の枠組みと仕組みを変えていくための策を実行していきます。」
多様な視点や経験の構築は、州知事と直接働いた影響が大きいといいます。「具体的に、多様で包摂的な働き方を推し進め、それを実現させるための方法を多く学びました。そして、もう一つの大切な学び。それは、『思い上がった態度はもってのほか。自分一人でこのコミュニティーを作っているのではない』という戒めです。」
また、これらを次世代に継承をしていくのも一つの務めと心に決めています。そう思う理由の一つが、11才と8才の子供の存在です。
「働く母として、アジア人の妻として、どの様にバランスをとって生活をしていくのかは共通の悩みです。子供たちとの貴重な時間をいかに作り出していくのか、それを常に考えていますね。気力体力の保持、そして時間の管理をいかに計画的に、そして柔軟におこなっていくかでストレスレベルはだいぶ下がります。
それに、生活の中で目の前のことに手いっぱいになっていると、当然自分のことは後回し。子供や家族のことばかりを優先にしている自分がいます。同時に、頭の中は仕事の事でパンパン。なのであえて意識をして、自分自身をいたわるセルフケア、そして自分のための時間は絶対に必要と言い聞かせているんです。疲れ切っている頭と心では、正しい判断が出来なくなってしまいますから。」
そんな超過密な仕事と家庭の両立を一番理解してくれ、プラス『激励』をしてくれるという夫の存在は欠かせません。
「カンボジア難民として、アメリカに渡って来て苦労を重ねてきた人です。彼の理解と協働なしには、キャリアを積むことは不可能でした。
カンボジアは、アジアの中でも特に男性優位の社会です。今の時代においても、女性が高いリーダーシップを発揮することは一般的ではありません。そんな環境で育ったにもかかわらず、カンボジアの古き良き部分のみを残し、現代風に家族皆が協力して家庭を支えていくことを日々実行している夫です。
将来の世代のための模範となるように。この世代の女性リーダーを増やして、挑戦していく姿を見せ続けていくように。常にそう、私を励ましてくれます。」
男性の理解、協働、参画があってこそ、現実的な女性の活躍が広がっていく。信頼している人からの真の励ましによって、安心して社会に進出していける手本がここにあります。
そして、もう一人の実務的サポーターが義母です。欧米では珍しい3世代住居。この基盤を円滑に日々過ごすには、当然のごとく互いの努力が必要だといいます。
「孫の送り迎えと家事をすることを通して、家族を支えてくれている義母です。なによりも、子供たちがカンボジアの風習や文化を学べることは、理想のバイリンガル・バイカルチャー教育にもなっているんです。」
小さな社会としての家族のコミュニケーションを円滑に行うためには、家族一人ひとりが互いの役割をこなし、同時に楽しむこと。そのためにも、出来る限り共通の生活認識を分かち合いながら、一緒に進んで行くことが大切だと語ってくれました。
意識をして、互いを尊敬する事はもちろんのこと、日々の感謝、そして、さりげないいたわりの言葉を意識して発信していくことで、家族と夫婦の絆を一層深めていきたい。そう締めくくる姿に、しっかりと根を張る野花の姿が重なって見えました。
世の中は常に変化をし、女性を取り巻く環境も変わっています。一人ひとりの多彩な生き方は、社会の豊かさにつながります。
先ずは、あなた自身が、ほんの少しだけ『なにかを』意識をし始めるのはどうでしょうか。
それがいつしか、あなたの家庭、会社、地域というコミュニティーの多様性と包括性へと進む、はじめの『半歩』に繋がっていくのかもしれません。
「本、コト、ときおりコンフォートフード」
ソフォーン|she/her|オレゴン州経済開発局長
LEAN IN (リーン・イン) - 女性、仕事、リーダーへの意欲|シェリル・サンドバーグ (著)
フェイスブックの最高経営責任である著者。とはいえ、その日々の暮らしと経験は、一般に働いている女性に共通する項目ばかりです。企業経験や家庭生活と子育てに基づいて書かれた、実践的なアドバイスや日々のヒント。私自身、この本に出合ったことで救われました。特に『自分をいたわり、自身の心身のバランスを取る』ことがいかに大切なのかを教わった、貴重な一冊です。
著者プロフィール
- 山本彌生
企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。
Facebook:Yayoi O. Yamamoto
Instagram:PDX_Coordinator
協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)