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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

伝統を守るか、近代化を図るか? プファルツの「ワイン女王廃止」に議論が過熱!

時代が変わればマーケッテイングツールも変わる

プファルツワイン女王は、地元民にとってアイデンティティの象徴であり、ワイン文化の不可欠な一部である。

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プファルツワイン協会のボリス・クランツ会長は「ワイン女王廃止は正しい決断だ」と語っている。

これに対して協会の代表に対する個人的かつ侮辱的な攻撃や批判が集まったのも事実だ。2年間の準備期間を経ての決断とはいえ、ワイン女王廃止に対する批判も高まるばかり。

その反面、業界や他のワイン産地からは多くの激励もあるという。賛成派は、ワイン生産地プファルツの提案に対して「過去の慣習を刷新することは必要」と語っている。

地元の政治家たちはプファルツワイン女王を維持するように求めている一方、元プファルツワイン女王そしてドイツワイン女王の栄冠を得た、現職のトップ政治家ユリア・クロックナー氏は、こう語っている。(下の画像・2018年ドイツワイン女王最終選考時にゲストとして登壇したクロックナー氏)

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「ようこそ2024年へ。時代や社会が変化しているのだから、ワイン女王というマーケッテイングツールもまた変化していかなければならないのです。ラベルやワインボトルの形、ワインのスタイルや栽培、熟成が進化したのは、消費者が進化したからでもあります。ソーシャルメディアが発達した今、ワイン業界はマーケッティングや注目度にも左右されます。ワイン女王は、すでにデジタル・メディアを非常にプロフェッショナルに使いこなし、モダンなアプローチをしています」

早急すぎた決断?

伝統にこだわらず、どの業界でも改革は必要だ。だが、あまりにも突然だった。何が同協会にこのような性急な決断をさせたのだろうか?そのような必要性があったのだろうか?プファルツのワイン生産者の一部は、このニュースを理解できず落胆した声も上がっている。

業界専門家はこう語る

「プファルツワイン協会が取った措置は、伝統に彩られ、近代化を受け入れつつも、誇りを持って慣習にしがみついているこの業界にとっては、あまりにも急進的すぎるように思える。同協会の責任者たちは、自分たちの決断がもたらす結果を完全に過小評価していた。未来を切り開くには、他者を巻き込まなければならない。結局のところ、大多数の人々がそれを支持すべきなのだ。プファルツと地元ワイン生産者のために」

76代目ドイツワイン女王選出(9月21日予選、27日最終戦)に向けて、すでに準備が始まっている。今後のワイン業界の動向に注目したい。

 

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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