日本人コーヒー生産者が語るコロンビア
「あなたコロナウイルス持ってないよね?」私が体験したアジア人差別
世界各地でコロナウイルスによるアジア人差別が起きており、実際に被害にあっている日本人もいるようです。
コロンビアでアジア人に対する暴力事件が起きたというのは今のところ聞いた事がありませんが、ここではコロナウイルス関連の差別が全く起きていないと言う意味ではありません。今回のブログでは私がパンデミックが始まったころ実際に経験したことについて書こうと思います。
病院で経験した差別
コロンビアではじめての感染者が確認された1週間後、コーヒー収穫中にアシナガバチの集団に襲われアナフィラキシーショックを起こし夜間救急病院に駆け込んだ事がありました。
到着時には症状が落ち着いてきて歩くことはできたのですが、血圧が下がりフラフラの状態だったため周りからの視線を痛いほど感じたのを覚えています。その日、病院にはたくさん人がいたのに待合室で私の両隣には誰も座りたがらず、避けられていることは明らかでした。
問診を受けたあと救急のベッドに空きがなかったため、私はベッドで寝ているお婆さんの横のパイプ椅子に座らされ、点滴が終わるのを待っていました。
お婆さんとおしゃべりしながら待っていると、仕事を終えたお婆さんの娘さんが面会にやってたのですが、彼女はお婆さんと話ながらも私を仕切りに睨んでくるのです。嫌な感じだなぁと思いながらもお婆さんとの会話を続け、私が「日本にいた時は・・・」と言ったところで娘さんが驚いたような顔で「あぁ!日本人だったの?!」と聞いてきました。そうだと伝えると「弟からママの隣に中国人がいるって電話きて心配してたのよ!あっち(病院の奥の方)で中国人がきたってパニックになってるよ!」と。実際にパニックになっていたかは分かりませんが娘さんはこう続けます。
「私、中国人大っ嫌い!!あいつらがコウモリ食べるからこんなことになってるんだ!キモっ!動物虐待!ところであなたウイルス持ってないよね?」
返す言葉が見つからないとはこう言うことかと感じた瞬間でした。
パンデミック前からコロンビアに住んでいるから持っていないと説明したのですが、そのあとも何度か本当にウイルスを持っていないか聞かれました。
その日の出来事については個人のブログで詳しく書いていますので、興味がある方は読んでみてください。
その他にもまだマスクが義務付けられていなかったころ、街で小学生低学年くらいの女の子が私とすれ違う瞬間に口を手で覆ったと言う出来事もありました。
ウイルスが広まり始めた当初は「アジア人=ウイルス」と思っている人が多くこのように「避けられている」と感じることがたまにありましたが、現地の人の間で感染がおさまり切らなくなっている今は、アジア人だからと言うだけの理由で避けられるようなこともなくなりました。
パンデミック当初はニュースにも
私と同じような時期に同じ経験をしたアジア人は他にもいるようで、国内のニュースで話題として取り上げられたこともありました。
¡No hay derecho ! Ciudadanos asiáticos en Bogotá están enfrentando el racismo y la discriminación por personas que los relacionan con el covid-19. Algunos manifiestan ser agredidos física y verbalmente por colombianos. #CityNoticias pic.twitter.com/sk1TjoTJZl
-- Canal Citytv (@Citytv) March 13, 2020
上の動画は昨年3月13日にコロンビアのメディアCity TVで放送されたものです。動画の中では2人のアジア人が首都ボゴタで受けた差別について語っています。男性はインタビューの中で「嫌な思いをするのは、私が公共の場に行っただけで周りの人々が『アジア人だ。コロナウイルスを持ってるんじゃないか?近づかないでおこう』と感じてしまうことです。ウイルスは中国からきましたが、全てのアジア人が感染しているとは限りません。」と訴えています。
去年2月にアップされた上の動画では日系コロンビア人のタケガミ タカシさんが、飛行機内で受けた差別的行動について語っています。
動画の最後にタケガミさんはカメラに向かって「あなたたちが自身の健康を心配するのは分かります。でも私たちも人間であり、ここに住んでいる私たちは顔がアジア人だからといってこのように扱われるべきではないことを理解してください。私たちに対するこの恐怖心はのちのち大きな汚点となってしまうことに気づいてください。」とコメントを残しました。
コロンビアではアメリカのほどのヘイトクライムは起きていませんが、コロナウイルスで家族や職を失った人の中にはアジア人を恨んでいる人も少なくないと思いますし、実際に程度は違えど私のような差別を受けたアジア人はたくさんいると思います。
しかし、黒人に対して「ネグロ(黒)」と親しみを込めたあだ名として呼んでしまうくらい人種差別の意識関心が低いこの国で、見下されがちのアジア人がどうやって声を上げていけばいいのか、なかなか答えが出てきません・・・。
著者プロフィール
- 松尾彩香
コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。2022年7月よりスペイン在住
Twitter: @maon_maon_maon