World Voice

England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

セーターが虫に食われた! 英国での虫よけに学ぶ

生まれて初めて衣類を虫に食われた経験はなかなかのショックだった。旅行のおみやげなんかでラベンダーのポプリやシダーウッド(ヒマラヤスギ)の木片をいただくことがあるけれど、どちらも虫よけ効果があるそうだ(知らなかった!)。薬に頼らない防虫もずいぶん人気のようだ。写真shutterstock_christinarosepix

 今年の秋はわりと暖かかった。だから11月末になってようやく厚手のセーターを取り出してみて、びっくり。穴が開いているではないか! しかもお気に入りのものに限って! カシミアとウールのセーター2枚ずつ、夫のセーターが1枚。人生初の経験だった。

 クローズ・モス(clothes moth)には気をつけて、とは聞いていた。最初に教えてくれたインドの友人は、「カシミアや絹のサリーはほとんどだめになっちゃって、本当にがっかりしたわ。あなたも着物に気をつけなさいよ」とアドバイスもしてくれた。だから着物だけは日本の防虫剤を使って気をつけていたけれど、他はとりあえず清潔なら、という程度であまり気にしていなかった。

モスす - 2.jpeg

穴の開いたセーター2枚。右のセーターは今年の初めに買ったばかりなのに、見たことないほどの大きな穴が! どちらも穴の大きさや位置を考えると、目立たずに繕うことはほぼ不可能。ダーニングも難しそうだ。えーん。筆者撮影

「衣類が虫に食われた」というのは、こちらでは「クローズ・モスが出た」と表現する。日本語でもイガ(衣蛾)と呼ばれるクローズ・モス(または単にモス)は、成虫でも体長1センチくらいの小さなベージュ色の蛾だ(今回の騒動で1匹だけ見た!)。衣類を食べるのは実は幼虫だけで、イモムシのように手足のない形をしている。カシミアや羊毛など上質の天然素材ほど繊維が柔らかく食べやすいので、被害を受けやすい(趣味のよい虫ではある)。

 英国に住むようになって、モスにやられたとたまに聞くようになった。日本ではほとんど聞かなかったけれど、それは気候か何かの違いなのか、それともしっかり防虫剤を使っているからなのか。英国でもまったく未経験という人も多いので、そんなに頻繁に起きるわけでもなさそうだ。

 ただモスは外から持ち込まれるので、家の中でも土足で過ごすことのある英国では被害に遭いやすいかもしれない。この国によくある家具付きの賃貸物件で備え付けのカーペットやカーテンから被害に遭うとか、古い建物はモスが出やすいとも聞く。わが家のフラット(共同住宅)は1930年代の建物だし、靴をクローゼットに収納しているのもいけなかったのかしら(だって「玄関」がないんだもの)。

 同じ虫なので対処の手順も日本と同じだ。①殺虫剤で部屋からモスを駆除、②被害にあった衣類は処分、③その他は洗濯かクリーニング、④クローゼットや家具類を殺虫・掃除して防虫剤を置く、が基本。一度で駆除しきれないこともあるので、定期的に殺虫剤や防虫剤を追加していく。

 見えないところにも卵が潜んでいるので、家中くまなく殺虫・掃除すること。被害に遭いにくい化学繊維の衣類や家具やカーテンも忘れずに。モスは高温・低温に弱いので、衣類を洗濯するなら50度以上(家庭用の洗濯機に高温設定あり)、洗濯できないものはクリーニングに出すかスチーマーをかける、あるいは密封して冷凍庫で一晩から数日寝かせて駆除すること。特に大切な衣類は密封して保管すること。汗や汚れで繁殖するので、衣類を清潔に保つこと。いっそ衣類をすべて化学繊維にするのもあり。

 ネット検索や友人知人からの助言で、モス対策の世界が目の前に広がった。衣類を冷凍庫に入れるというのはびっくりしたけれど、衣類はひんやりするだけで凍らないことにも驚いた(水分がほとんどないものね)。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ