「女を捨てて」社会に奉仕、同性愛への偏見、過剰な卑下、セックスレス......ファブ5があぶり出す日本の病
Queer Eye Comes to Japan
第3話に登場する香衣は試着中に体形に関するコンプレックスを打ち明ける COURTESY OF NETFLIX
<リアリティー番組『クィア・アイ』が日本に上陸! 5人が日本人を縛る保守性や伝統的価値観に向き合うと...>
ネットフリックスのリアリティー番組『クィア・アイ/外見も内面もステキに改造』が日本にやって来た。
『クィア・アイ』は、ファブ5ことゲイの5人組が、さまざまな悩みを抱える相談者の元にはせ参じ、ファッションから自宅のインテリアまで変身させる番組。陽気だが情に厚く、涙もろい5人のキャラクターのおかげもあり、2018年の開始以来、世界的な大ヒットとなっている。
その5人が日本の相談者の悩みに応える『クィア・アイin Japan』(全4話) が、昨年11月から全世界で公開されている。これまでアメリカの相談者を相手にしてきたファブ5の解決策が、果たして日本でも通用するのか。
通常のシーズンとは異なり、日本の視聴者を意識して、日本の有名タレント・水原希子(29)をファブ5のサポート役に起用していることが、今回のシリーズの特徴の1つと言えるだろう。
ただ、水原は「東京ガイド」として、ファブ5と街を練り歩いたり、日本社会に特有の概念を簡単に説明するだけで、もっぱら「つなぎ」のようなシーンにしか登場しない。その扱いは、日本のテレビで女性タレントに与えられる滑稽な役割そのものだ。やたらとキュートな衣装で、テンションが高く、番組における役割は最小限に抑えられている。
4人の相談者は、それぞれ独自の事情を抱えているが、ざっくりした共通項は、「現代の日本社会で期待される生き方と現実のギャップに苦しむ人々」のようだ。従来はタブーとされてきた問題をオープンに話そう、という意気込みも感じられる。
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女を捨てて社会に奉仕?
第1話では、自宅でホスピスを運営する看護師・洋子 (57)が「女を捨てて」仕事に人生をささげげる姿が紹介される。日本では、洋子のように親や妻といった伝統的な家族の役割を持たない人が、無私無欲に社会に奉仕することが期待されがちだ。
11年の東日本大震災がいい例だろう。福島第一原子力発電所がメルトダウンを起こしたとき、もはや養う家族のいない年配の職員が、致死量の放射線を浴びる作業を率先して引き受けたという話が、美談として語られている。
確かにこのレべルの無私無欲は尊いかもしれないが、日本社会には総じて、個人よりも国家を優先するべきだと迫る巨大なプレッシャーが存在する。日本だけではない。東アジア社会には集団主義を重視する傾向があり、個人主義的な行動は自己中心的で恥ずべきものと見なされがちだ。
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