コラム

男女双方のストレス軽減を目指す「フェミニズム第3世代」

2016年01月27日(水)16時00分

ヒラリーから要職に抜擢されたスローターだったが、家庭の問題で退かざるを得なかった Ruben Sprich-REUTERS

 今年は、大統領選でアメリカの次期大統領を決める重要な年だ。元国務長官のヒラリー・クリントンは有力候補のひとりだが、これが実現するまでには2つの大きなフェミニズムのムーブメントがあった。

 第1世代(1st. wave)のフェミニズムは、19世紀末から20世紀はじめにかけての「女性の参政権運動(Women's suffrage)」だ。投獄を覚悟で戦った女性たちのおかげで、女性の私たちは現在のように選挙権を得ることができたのだ。

 第2世代(2nd. Wave)のフェミニズムは、中絶の合法化や、社会的な男女平等を憲法のレベルで求める運動で、黒人の公民権運動と反戦運動が高まった1960年代におこった。この運動後の知的階級のアメリカ人女性は、フランスの女性哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「女は女に生まれるのではない。女になるのだ」という言葉のとおり「女も努力さえすれば、男と同じことができるはず」と信じて育った。

 私の周囲には、第2世代のフェミニズムで育ったアメリカ人女性が多い。ヒラリー・クリントンなどの女性が要職につくようになったのは、この世代の女性が努力したからだ。しかし、私の女友達が自分の人生を通じて知った現実はもっと厳しかった。男女同権が進んでいると思われているアメリカでも女性が男性と同様に働くのは困難だ。同じ仕事をしていても、男性と女性では賃金に格差があり、組織で要職に就く女性はいまだに多くはない。

 しかも、男性と同様かそれ以上に努力して要職に就いた女性(とくに母親)は、家庭で主婦や母としての役割をきちんと果たしていないことに後ろめたさを感じている。また、自分の能力を過小評価して遠慮してしまいがちだ。

 そういった女性に対して、後に続く女性を助けるためにも「Lean In(遠慮して身を引いたり、傍観したりすることの逆で、身を乗り出し、積極的に関わって行くこと)しろ」と呼びかけたのが、フェイスブックCOO(最高執行責任者)」のシェリル・サンドバーグの『LEAN IN』という本だった。

 日本でも翻訳出版された良書だが、「ここに書かれている内容では、まだ足りない」と思った女性がいた。

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

香港紙創業者に懲役20年、国安法裁判 国際社会は強

ワールド

仏中銀総裁、6月に前倒し退任 ECB理事会のハト派

ワールド

イラン原子力長官、ウラン濃縮度引き下げ検討も 制裁

ワールド

英首相、辞任要求にも続投示唆 任命問題で政権基盤揺
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story