コラム

外国人は何年いてもしょせん「ガイジン」 日本が中国の製造業から学べること

2021年01月11日(月)09時20分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

日本にはまだ高度な技術とそれを支える教育があるのに TOMOHIRO OHSUMI/GETTY IMAGES

<日本を愛した友人は、繁栄を謳歌する中国に渡り唖然とした。製造業から変革すべき日本が、中国に学べる点はたくさんある>

明けましておめでとうございます。さて、年末に少々ショッキングなニュースが飛び込んできた。私の外国出身の友人が、日本を離れて中国で働くというのだ。彼はとても優秀で、日本で博士号を取ったのち、自動車関連の大企業に勤務して論文を数十本発表し、自動運転技術の特許をいくつも持っている。日本が好きで、家族ともども日本国籍となり、良い友人も得て日本に骨を埋めるつもりだった。しかし、長年働き暮らすなかでもう限界だと思ったそうだ。

日本国籍を持ち、日本の大企業に何年も勤めていても、どの不動産屋を通しても部屋を借りることができず、会社が代わりに借りないと住む部屋もなかったという。その後住宅を購入したが、まだ引っ越しをしている最中に近所のオジサンが怒鳴り込んできて、「外国人だかなんだか知らんが、挨拶もないとはどういうことだ」と大声で説教された。

勤務先では外国人、特に欧米人からどんどん辞めていく。外国人は信用されず、会議にもしばしば呼ばれない。貢献していない社員を日本人だからといって特許申請に加えさせる。管理職になっても、途上国から来たかわいそうなガイジン扱い。政治的駆け引きばかりで新しい発想を受け入れる場がない。どんなに国際的に価値がある技術を持っていても、せいぜい部長職で年収1500万円止まり。つまり日本では苦労が報われない、ということだ。

私たち外国人は、日本では何年たってもしょせんガイジンなんだよ、と彼は言うが、残念ながら最近私もそう思う。この私のコラムもウェブで公開されるたびに、イランに帰れなどという心ないコメントがたくさん寄せられる。だから私にはこの友人がどんな思いをしてきたかもよく分かる。

そんななか、彼は中国の自動車やネット関連の有名企業の幹部から、何年にもわたって直々に転職の誘いを受け、ついに中国に行くことを決断したそうだ。その中国の最大都市では、初日から地元の不動産屋で部屋を借りることができ、社内の研究開発部門は20〜30代の若者ばかりで闊達な議論が行われており、長年暮らした日本との差に唖然としたという。もちろん、新しい環境では誰しも目新しく素敵なものばかりが目につき、日がたつにつれてマイナス面も見えてくるもの。それでも繁栄を謳歌する中国大都市の雰囲気がうかがえるというものだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ地上作戦控え空爆強化

ビジネス

英消費者信頼感、4月は2年ぶり高水準回復 家計の楽

ワールド

中国、有人宇宙船打ち上げ 飛行士3人が半年滞在へ

ビジネス

米サステナブルファンド、1─3月は過去最大の資金流
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story