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トランプの「ディール外交」──ゼロサム的世界観を紐解く

A MORE ZERO-SUM WORLD

2025年1月23日(木)16時28分
ラビ・アグラワル(フォーリン・ポリシー誌編集長)

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選挙戦終盤の集会で息子たちと(24年11月) CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

この流れが目に見えて顕著になったのは、おそらく2003年のイラク戦争開戦以降のこと。トランプの復活で、国際社会のディール志向はさらにエスカレートするだろう。

トランプのゼロサム思考に、世界はあの手この手で対処することになる。アメリカとの友好関係に頼ってきた国々は、混乱に見舞われ痛い思いをするだろう。


昨年2月の選挙集会で、トランプはこんな話をした。相応の防衛費を負担しないならば他国に侵略されても守るどころか「好きにしろ」と侵略者をたきつけてやると、あるNATO加盟国を脅した上、「金を出せ」と要求したのだという。

こうした過激な物言いは交渉で望ましい結果を引き出すための方便だと、トランプ支持者は主張する。

新興経済国はトランプを歓迎

いずれにせよ、ヨーロッパはアメリカとの付き合い方を変えなければならない。EUは既に加盟国に国防費の増額を促し、トランプに勝者の気分を味わわせるため米製品の購入を増やそうとしている。

昨年11月、ECB(欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド総裁はフィナンシャル・タイムズ紙で、いわゆる「小切手戦略」を採用し米製品の輸入を増やすべきだと提案した。

同様にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、希少鉱物の採掘権を米企業に優先的に与えると述べた。

もっとも「米大統領がトランプでなければいい」と欧州諸国が思っていることに、疑いの余地はない。

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トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

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