次期トランプ政権は不法移民の強制送還で自分の首を絞める
DEPORTATION DEBACLE
「アメリカ人はそういう仕事をやりたがらないと言うが、不当に低い賃金が嫌なだけで、まともな賃金なら喜んで働く」と、バンスは昨年10月にニューヨーク・タイムズに語った。
だが過去の事例を見ると、アメリカ人の労働環境は改善されるどころかむしろ悪化しかねない。コロラド大学デンバー校のアンドレア・ベラスケス准教授(経済学)らは、40万人以上の不法移民を強制送還したオバマ政権の政策の効果を検証し、大量送還が労働市場に与えた影響を調べた。
結果、50万人近い不法移民が強制送還かそれに関連した事情でいなくなると、アメリカ生まれの労働者4万4000人が失業していたことが分かった。なぜか。不法移民の大量送還で労働力が不足し、「人件費が上がって、製造コストが上昇した」ため企業の経営が圧迫され、波及効果でアメリカ人労働者が職を失ったと、ベラスケスは説明する。影響を受けるのはアメリカ人労働者だけでなく、米経済全体にしわ寄せが及ぶと考えられる。
ピーターソン研究所の分析によれば、トランプ政権が130万人の不法移民を強制送還すれば、2028年までにGDPの伸び率は1.2%低下し、より大規模な計画実施で830万人が送還されれば、実に7.4%も低下するという。
いずれの場合も、大量送還で物価はさらに上昇し、特に農業部門が大打撃を受けると予測されている。
米経済を支える柱を1本引き抜けば、揺れがどこまで広がるかは想像に難くない。
2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む
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