ヒズボラ指導者の殺害という「勝利の美酒」に酔うネタニヤフ首相だが、政権の足元は「崩壊」寸前
The Glow of Temporary Triumphs
ネタニヤフ自身は、10.7の責任を誰かに押し付ければ満足だったかもしれない。だが極右の宗教的保守派は、この機会に軍や情報機関から左派(つまり世俗派)を一掃したいと考えていた。
この試みはほぼ失敗に終わった。
同国のシンクタンク「ユダヤ人政策研究所」の調査によれば、ハマスとの戦争が長引くにつれて国軍への信頼は低下し、今年3月時点で75%だった軍部に対する信頼感は7月時点で43%まで落ちていた。
しかし、政府はもっと信用されていない。同じ調査で、政府への信頼感は同じ期間に35%から26%へ低下していた。別の世論調査でも、国民の多くは早期の総選挙を望んでおり、いま選挙が行われたら現政権は敗退するという可能性が示されている。
今のネタニヤフは対ヒズボラ戦勝利の美酒に酔っているが、その戦果をもたらしたのは軍と情報機関の実戦部隊だ。
しかも彼らの多くは予備役の軍人で、招集される前にはネタニヤフ政権の進める司法改革に反対するデモの先頭に立っていた。実際、ナスララの暗殺を敢行したF15飛行隊に所属する予備役兵士の過半数も、招集されるまではデモに参加していた。
それだけではない。9月の劇的な戦果は過去16年間にわたる緻密で執拗な情報収集活動のたまものだが、それを制服組トップとして率いてきたのはベニー・ガンツとガディ・エイゼンコット。いずれも今は野党の有力政治家だ。