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荒川河畔の「原住民」②

「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立てる荒川のホームレスたち

2024年9月4日(水)10時35分
文・写真:趙海成

斉藤さんによると、ウクライナ戦争が勃発したとき、アルミニウムの相場は急騰し、1キロのアルミ缶が260円、20キロで5200円が手に入るようになったという。最近は戦局が変わったため、アルミ相場はまた下落し始め、今では1キロのアルミ缶が200円でしか売れない。

その原因については簡単で、軍需産業は、軽量でありながら高い強度と耐久性を持つアルミニウムを多く必要としているからだ。例えば、戦闘機のエンジンケースや翼、尾翼、オイルタンクなどはアルミニウムから出来ている。

戦争が激しくなればなるほど、戦闘機の損失が多くなり、アルミニウムの需要が増える。それに伴ってアルミニウムの価格が上昇し、アルミ缶の相場も上がる。水位が高くなれば、船が上に上がるのと同じだ。

現代の戦争では、アルミニウムをそれほど多く消費しないという考えもある。開戦当時のアルミニウム価格の上昇原因は、年間350万トン以上のアルミニウムを生産するロシアが経済制裁を受けるかどうか、という不確実性によるものだったという。

アルミニウムの価格が戦争と関係があるとはいえ、アルミ缶を売って生計を立てているホームレスのみなさんを含め、戦争で儲かって喜ぶ人はほとんどいないと思う。世界の平和を守ることは、何よりも大切なことだ。


※ルポ第3話:「この選択は人生の冒険」洪水リスクにさらされる荒川河川敷のホームレスたち に続く
※ルポ第1話はこちら:荒川河川敷ホームレスの「アパート」と「別荘」を、中国人ジャーナリストが訪ねた

(編集協力:中川弘子)


[筆者]
趙海成(チャオ・ハイチェン)
1982年に北京対外貿易学院(現在の対外経済貿易大学)日本語学科を卒業。1985年に来日し、日本大学芸術学部でテレビ理論を専攻。1988年には日本初の在日中国人向け中国語新聞「留学生新聞」の創刊に携わり、初代編集長を10年間務めた。現在はフリーのライター/カメラマンとして活躍している。著書に『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)、『私たちはこうしてゼロから挑戦した――在日中国人14人の成功物語』(アルファベータブックス)などがある。

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